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笑う鬼と泣きむし
むさっくるしい



「い、やぁあああっ!」

朝霧の悲鳴が、夏の空に響いた。




事の始まりは夏を迎えた長宗我部軍の船にて、朝霧が船の掃除をしていた正午だった。

「あちぃな…」

船員達は、むさっくるしさ満載のこの船で今更な話題を取り上げた。


ちなみに、朝霧は話し合いに参加していない。



未だに、挨拶しか出来ない彼女の対人スキルの低さは、船員達も知る所である。
むしろ微笑ましいな、と思っている野郎共であった。




「おぅおぅ!どうした?」


「「「アニキぃいい!」」」
船長の元親が、船室から出て来ると黄色い声……もとい、雄叫びが空気を揺らした。


「ぁ…アニキ、さん」


ピタ、と雄叫びが止んだ。
荷物の影に隠れるように立つアサギが、言葉を発した為である。

ちなみにアニキ、と呼んでしまったのは周りに釣られてしまったからだ。

急に静かになった空気に、朝霧は緊張しながらもーーー元親の目を見据えて、


「ぉ…おは、」

「お、おう…(ちょ、頑張れよアサギ!)」


みんなが見守る中、


「ぉは、ょぅござい…ます」

死にそうな表情で、辛うじて届く音量の挨拶をした。



それに対し、みんなの兄貴である元親はくしゃり、と笑って

「おう、元気そうだなアサギ!(どばどば)」

盛大に鼻血を放出していた。



「…言っとくが、暑いからだからな?野郎共引いた目で見てんじゃねぇええ!!」




「そうなんスよアニキぃ!暑いじゃないですか!」

「暑いぜアニキぃ!」

「アニキぃいい!」




「仕方がねェなぁ……脱いでいいぜ。どうせ野郎しか居ないんだ」

そんな兄貴の一言に。
朝霧にとっての地獄絵図がたちまち広がったのである。



***

「私は何も見てない私は何も見てない私は何も見てない…」



その場から走って逃げた朝霧は、荷物の間で体操座りをしていた。


信じられない。


「なんでふんどしってあんなに食い込んでるの…」

顔を真っ赤にして、唸る朝霧は……ぐらり、と床が持ち上がるような感覚に陥った。



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