笑う鬼と泣きむし
3
母上、私を見てください。
父上、私と遊んで下さい。
ねぇ私は、ちゃんと此処に居るのに。
***
頭が重い。
きっと体が疲れてるんだ。
そうに決まってる。
バサバサと、羽音が聞こえる気もしたが朝の鳥にしてはなんか…なんか、あの
「モトチカ!モトチカ!」
…元親さん?
こんなしゃがれた声だっけかいや違うだろう。これはまるで、
「…鳥、の」
眼前にドアップで鳥が居たら。あなたはどうしますか。
私は、とりあえず抱きしめました。
「可愛い…!ねぇ、喋った?喋ったよね!すごい頭良い子なのかなすごい…!」
人とはあまり関わって来なかった代わりに、とは言わないが動物は大好きだ。一度、前田家を訪問した時は発狂してしまった事を思い出す。
鳥特有の、かくかくとした首の動きも無理矢理まいたバンダナも可愛い!
ギュッと、骨には気を付けて抱きしめていると鳥は「モトチカ!」とまた名前を呼んだ。
「……元親?」
「あぁ?呼んだかよ」
ぎしり、と木の床が鳴った。
同時に私は此処がまだ海上であり、ついでに長宗我部軍の船と知るのはもう少し後のこと。
「………」
いまは、まだ。
笑いを堪えているような元親さんを、嫌な汗をかきながら見る事しか出来ない。
「なんでィ、鬼でも見たような顔してよォ?……つぅか安心したぜ!」
にかっ、と笑った元親さんは【西海の鬼】なんて通り名が似合わない笑みを浮かべた。
「ちゃんと喋れんなら、喋れよなァ。その方が可愛……」
口を開いたまま、元親さんは固まって。突如壁に頭を打ち付けた。
「だから、そんな趣味ねェっつてんだろうがぁああ!」
とにかく、私は全力で引いた。
***
それから元親さんは私の現状とこれからについて話してくれた。
「…つーわけだ、毛利の野郎とやり合う為に資金調達したからよォ」
名前に何か引っかかりを覚えて、思わず「…毛利、様?」と口の中で唱えたが元親さんは気が付いていない。
「カラクリ作って、毛利ん所行った後で帰してやる。だが、タダ飯食わせる程俺も優しくはねェからよ。まぁ飯分位はちぃっと働け。いいな?」
「………ぇ」
働く?
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