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笑う鬼と泣きむし


小さな頃、私は何故女の子に生まれてしまったのだろうと考えた。


お侍さんだったら良かった。
それなら、容姿なんて気にならないのに。

艶やかな黒髪もない、
色白でもない、

平々凡々な私は、男の子だったなら家の役にたてたのに、
と考えていたんだ。



***


「自軍が戦ってるってのに、自分だけ逃げ出すのかよォ?」

「…ぅ……」



あ、やばい。
視界がぼやけたかと思うと、頬に涙が伝わって行く。


西海の鬼は、ギョッとした後で呆れたように溜め息をついた。

「なっさけねぇなァ…!ったく、鶴の字の軍はこんな奴らばっかよ萎えるぜェ…」


彼の言葉に、私はハッと自分の服を思い出した。

そうだ、私は今男物を着ているから脱走兵に間違われてしまってるのか…!

鶴姫ちゃんの軍の皆は、良い人達だ。なのに腰抜け扱いされるなんて、私のせいでなんて、絶対に嫌じゃないか。


口を開くのも怖いけど、もしかしたら殺されるかもしれないけど。


「…ち、…違います…」


「ぁあ゛?」



「わた、……オレは鶴姫さんの軍の者では有りませ、」



やった、言えた!
…言えた?あれ?

長宗我部さんが、慌てたような顔をしている。



なんでかな、と考える前に。


私の意識は唐突に切れた。



***


「大丈夫でしたかアニキぃ!」

鉄砲を担いだ、長宗我部軍の兵が慌てた様子で近寄ってきた。
目の前には戦前離脱しようとしていた男…いや、


「…おいおい、丸腰の侍なんて居るかよ?本当に只の民間人か…」

覗き込んで見ると、銃弾はわき腹を掠っただけのようだが…ショックが強かったのだろうか。

これで死なせては、西海の鬼の名が廃る。



「チッ、しゃーねぇなァ!俺はちょっくらコイツを船に運んで来るからよォ、戦線は任せるぜ野郎共ォオ!
俺が帰って来るまで、誰も倒れんじゃねェぞ!?」


「「「へい、アニキぃい!!」」」



ひょい、と船に倒れ込んだ男を担ぎ上げた元親は、


「随分と軽い野郎だな…?」


ついでに言えば、柔らかいしなんか甘い匂いがすると言うk


「いや、俺にはそんな趣味はねェっ!!?」


「「「へい、アニキぃい!!」」」



違和感を感じながらも、動揺のため気が付かない元親。




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あきゅろす。
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