笑う鬼と泣きむし
2
小さな頃、私は何故女の子に生まれてしまったのだろうと考えた。
お侍さんだったら良かった。
それなら、容姿なんて気にならないのに。
艶やかな黒髪もない、
色白でもない、
平々凡々な私は、男の子だったなら家の役にたてたのに、
と考えていたんだ。
***
「自軍が戦ってるってのに、自分だけ逃げ出すのかよォ?」
「…ぅ……」
あ、やばい。
視界がぼやけたかと思うと、頬に涙が伝わって行く。
西海の鬼は、ギョッとした後で呆れたように溜め息をついた。
「なっさけねぇなァ…!ったく、鶴の字の軍はこんな奴らばっかよ萎えるぜェ…」
彼の言葉に、私はハッと自分の服を思い出した。
そうだ、私は今男物を着ているから脱走兵に間違われてしまってるのか…!
鶴姫ちゃんの軍の皆は、良い人達だ。なのに腰抜け扱いされるなんて、私のせいでなんて、絶対に嫌じゃないか。
口を開くのも怖いけど、もしかしたら殺されるかもしれないけど。
「…ち、…違います…」
「ぁあ゛?」
「わた、……オレは鶴姫さんの軍の者では有りませ、」
やった、言えた!
…言えた?あれ?
長宗我部さんが、慌てたような顔をしている。
なんでかな、と考える前に。
私の意識は唐突に切れた。
***
「大丈夫でしたかアニキぃ!」
鉄砲を担いだ、長宗我部軍の兵が慌てた様子で近寄ってきた。
目の前には戦前離脱しようとしていた男…いや、
「…おいおい、丸腰の侍なんて居るかよ?本当に只の民間人か…」
覗き込んで見ると、銃弾はわき腹を掠っただけのようだが…ショックが強かったのだろうか。
これで死なせては、西海の鬼の名が廃る。
「チッ、しゃーねぇなァ!俺はちょっくらコイツを船に運んで来るからよォ、戦線は任せるぜ野郎共ォオ!
俺が帰って来るまで、誰も倒れんじゃねェぞ!?」
「「「へい、アニキぃい!!」」」
ひょい、と船に倒れ込んだ男を担ぎ上げた元親は、
「随分と軽い野郎だな…?」
ついでに言えば、柔らかいしなんか甘い匂いがすると言うk
「いや、俺にはそんな趣味はねェっ!!?」
「「「へい、アニキぃい!!」」」
違和感を感じながらも、動揺のため気が付かない元親。
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