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笑う鬼と泣きむし


目が覚めると、侍女が着替えを用意してくれた。父上に着せられたような、豪奢な物ではないが上品な着物で元就様らしい色だった。
元就様の砦であるらしい此処は、なんだか日に日に騒がしくなって行くようだった。


***

朝餉を、二人で食べていると伝令の人が駆け込んで来た。
元就様があからさまに嫌な顔をしていたが、気にせずに「どうされましたか」と尋ねた。


「ちょ、長曾我部軍の旗が見えました…!!奇襲です!」


「見張りは何をしておったのだ、よもや…」


目を細めて、元就様は何かを言おうとしてちらっと私を見た。

「…まぁよいわ。下がれ捨て駒よ……応戦する」

「はっ、」


そう返事をして、飛び出していく。私はどうしようか、と悩んだ。


「朝霧、座れ」


「え、でも」


「…大事な話があるのだ、座れ」


***


その頃、長曾我部軍はと言うと。


「テメェら!同じ釜の飯食った仲間をなんて呼ぶ!」


「「「兄弟です!」」」


「兄弟が攫われたら、兄貴は何をする!?」


「「「取り返します!」」」


統率がとれたような、そうでないような雄叫びのような返事に。元親は歯を見せて笑った。


「おぅ!兄弟を取り返しに行くぜェ!」

「「「うぉおお!!アニキー!!」」」


ひょい、と碇を構えた元親は何処からか紐をくくりつけて、船から毛利軍の中へと振り子の原理で突撃して行った。


「テメェら、しっかり着いて来いよォオ!」




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