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笑う鬼と泣きむし
鬼さんこちら

『アニキさーん!オレ帰って来たんですー!』

「おおっ!アサギ!」

キラキラと光るのは、海の照り返しかそれともアサギの笑顔か。とにかく、軽やかに走って来たアサギを受け止めようと両手を広げる元親も笑顔になる。

『アニキさーん!抱きしめてぇー!太平洋のはちぇまでー!』

「お、ぉおおっ!アサギーーっ!飛び込んで来い!」


どこかで聞いたようなフレーズに若干悩んだが、関係ない。

後ほんの少し、アサギが胸に飛び込んで来て、思いっきり抱きしめ――――、

ギュッと、

***

「めちゃくちゃ固いじゃねェかぁああ!」


思わず瞳孔を開き、寝床から飛び起きた元親は己の両腕の中に居た者に驚きながら―――どん引きした。

「……なに、してんだァ?鮫丸…」

居たのは、野郎共の中でも特に図体がデカい鮫丸。筋骨隆々としたそいつは、元親の顔を見てパッと頬を赤く染めた。

「お、覚えてないんですかアニキ…」



「…え」

さっ、と血の気が引いた。
まさかそんな嘘だろよくある事ではあるけど、いや無い!普通はねェよ!?ただお約束ってヤツだろなぁそうだろ、そうなんだろ?!

「昨日の夜…あんなに激しく、
「うぁあああ゛ぁあ!!」


やけ酒なんて飲むから体調崩すんですぜアニキ!」



沈黙の後。



「テメェそれを早く言え馬鹿やろぉおォォ!!」


長曾我部軍の船に、安堵と怒りの籠もった叫びが響いた。



***


しかし、あんな夢を見るなんてなァ…案外ショックだったらしい、と元親は海を眺めながら思った。


アサギが軍を去ってから数日。去るもの追わず、来るもの拒まず。


ぐだぐだと引き摺るのは性に合わないのだが、今回ばかりは特別って事にしておこう。


「なぁ、鮫丸よォ?」


「へぃ、なんですかぃアニキ」


「鬼の島から、宝持ち帰ってただで済むと思うか?」


元親のその言葉に、鮫丸含め野郎共は感じ取った。西海の鬼はご立腹であると。それと同時に――…


大変ご機嫌であると。


「宝の場所が割れてんだ、行くしかあるめェよ?なぁ、野郎共!!」


ばさり、と元親の肩にアサギを監視していた鳥が舞い降りた。



「アサギは毛利の野郎が陣営張ってる厳島だ!行くぜェ野郎共!」


海賊の流儀ってもんを、教えてやるぜ。





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あきゅろす。
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