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笑う鬼と泣きむし


これ以上、私の中に踏み込んで来ないで。臆病者と罵られてもいいから。

絶望されるくらいなら、
いっそ。


***

「…離してっ!」


そう叫びながら、拒絶するように元親の手を払った彼女は勢いよく扉から出て行ってしまった。


「なんだってんだよォ…?」

逃げ出してしまったアサギを黙って見送った元親は、火薬の詰まった木箱に腰を下ろした。

「…嫌われたか?」

珍しく悩みながら、頬杖をつく。前々から、よそよそしいとは思ってはいたが。いざ拒絶されると、


「…案外傷付くなァ、オイ」


野郎共と同じように扱ってきたつもりだった。強いて言うなら弟のような、むしろ妹のような…って、


「あいつは男だってェの!」

脳内で違和感なく女物の着物を着こなすアサギを慌てて消す元親だったが、残ったのは疑問であった。


本当に、男か?



「……ま、重要なのはそこじゃねェ」

(本当は重要なのだが)疑問を丸投げした元親は、火薬庫から出て後を追う事にした。


「避けんのはテメェの勝手だがよォ…それなりの理由が無きゃ、なんかこう…!モヤモヤすんだろうがっ!」

結果論。

「待ってろ、アサギ…!」

そんで、このモヤモヤした気持ちが何なのか分かるハズだからな!


***


「うわ、寒気が…っ!」


…何故か、鬼が笑ってる気がした。

私は結局、再び隠れんぼに興じているのである。今回は見つかり難いであろう、格納庫にある小舟に隠れたのだ。


膝を抱えて、目をつぶれば。


薄暗い格納庫なんて、真っ暗になるのだし私は布も被っている。絶対見つからない。

もう、あの人と向き合わないで済むのだ。



そう思うと、ホッとして。急に体が重くなり目蓋が下がってきた。

意識が、曖昧になり―…

私は、眠ってしまったのだ。


***


目が覚めたら、そこは。


また、戦場だった。





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あきゅろす。
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