笑う鬼と泣きむし
序
晴れ渡る空。白波を割いて進む海賊船――――もとい、長曾我部軍の船は瀬戸内海を優雅に「面舵いっぱぁああい!!!」
優雅n「「「へい、アニキぃいい!!!」」」
…むさっ苦しく航海していたのであった。
***
「……ってオイ、野郎共。今日は陸で戦でもあったのかよ?」
元親は、火薬と煙の匂いを辿りまだまだ遠い陸を見つめた。水平線に横たわる日の本は長い戦乱の世に疲れ果ててるようにも見える。
「大方毛利の野郎じゃねぇのか」
因縁の相手たる毛利は、しかし安芸を守り繁栄させる事しか考えていない。
だが、毛利とやり合うつもりで来たのではなく。
「あ、アニキぃい!見えましたぜ!!」
「…おう」
最近動きの活発な、巫女の戦船。
「よし、野郎共ォ!海賊の流儀ってもんを…教えてやりな!」
「「「うぉおお!!アニキぃいいいい!」」」
今日も今日とてむさっくるしい長曾我部軍なのであった。
***
「はぇ?長曾我部軍の皆さんが攻めて来たんですか?どうして?」
鶴姫は、部下の報告に首を傾げたが間もなく持ち前の矢を一本抜いた。
「来ちゃったものは拒めません!皆さんで!おもてなしいたしましょ!」
指揮者のタクトのように矢を振りかざす鶴姫。
盛り上がる家臣達。
しかし、そこに一人。
「……ぁ、の……鶴ちゃん…!」
先ほどまで、鶴姫とお茶をしばいていた少女がか細い声を上げた。
しかし、鶴姫には届いてないようで少女はオドオドと挙動不審になる。
「いいですか皆さーん!お客さんと言えども海賊さんです!悪い事をしたら!ビシッと!叱ってあげるのも優しさです!」
「つ、鶴ちゃん…!」
見かねた家臣の一人が、鶴姫に耳打ちをする。彼女は「あ」と振り向いて「てへ」と舌をチロリとだした。
「私とした事が…ごめんなさい、朝霧ちゃん!」
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