半透明な居候。
フェリクスさんて
紆余曲折を経て、アーサーさん家に帰ってきた私達は驚いた。
アーサーさんが、中庭に丸いテーブルを並べてまるでパーティーの準備をしていたり。
フランシスさんが、見た事ないような美しい料理を運んで来た事も、
確かに驚いた、けれど…!
「家がどう見ても真っピンクですありがとうございました」
「好きでこんな風になった訳じゃねぇよバカっ!」
***
アーサーさん曰わく、扉の修理をしてくれた人の後にそれはやって来たそうな。
「ありのまま起こった事を話すぜ…!そこのメタボとかワイン髭野郎なんてもんじゃ断じてねぇ…!」
イギギギ、という不思議な歯ぎしりの音を出しながら。アーサーさんはブツブツと愚痴っている。
そんな時だった。
軽快な、馬の走るような音と共に。
「ま、待ってよフェリクス…っ!」
パタパタ、と走る青年と。
「はぁぁ〜ポニー可愛ぇえー。なぁトーリス?」
ポニーに跨って移動して来た、おん…男の人と目が合ってしまった。
先ほどまで、堂々とポニーに跨っていた彼が。
「…っ!」
急にポニーから飛び降りて、走って付いて来ていたトーリスさんの後ろに隠れた。
「え、ちょっ…フェリクス!?どうしたのっ」
「…し、知らんやつおるし…!」
その言葉で、私に視線が集まった。
「…あ、どうも居候です」
***
「なんかなー、近所にお化け屋敷有るって聞いたから見に来たんよー。けど、ピンクにしたら可愛ぇえかなーって思ったらやりたくなっただけだしー」
どうやら、フェリクスさんがアーサーさんの家を真っピンクに染め上げた張本人らしい。
悪びれなく、空になったペンキのバケツを振り回す彼の横で肩をすくめているのはトーリスさん。
「…はぁ、すいません…もっとちゃんとフェリクスを見とけばこんな事には…」
そこに、アルが「気にする事ないよ」とフォローした。
「確かにアーサーの家はお化け屋敷みたいだったからね!ピンクに塗って何だかハッピーな色になって良かったよ!」
「良くねぇよバカっ!俺はな、あの外装には凝ってたんだよ…!気品があると言うか…伝統的というか…」
涙目で語るアーサーさんを慰めながら、チラッと視線をさまよわせる。
すると、なぜか。
トーリスさんが私を見つめていた。
「…?」
私が見ていると気付くと、慌てて視線を逸らしてしまう。
気になるけど、そんなに重要な事じゃないよなーと思っていた。
そんな私をマウントポジションで殴りたい。
だって、この時は
フェリクスさんて
超マイペースだな
って事くらいしか考えてなかったんだよ。
まったくもう。
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