半透明な居候。
この味覚音痴兄弟
「よし、じゃあ俺もちょっと泊まるんだぞ!」
「ぼ、僕も「なぁ居候!君の部屋の隣は開いてるかい?!アーサーの家にはモンスターが住んでるからね、ヒーローの俺が守ってやるんだぞ!」……アーサーさん、いいですか?…」
盛り上がるアルと、何故か肩を落とすマシューを眺めていると。隣に居たアーサーさんに話が回ってきた。
「な、なんだよお前ら…別に泊まる必要はねーだろっ!…け、けどまぁ部屋は空いてるから自由に使えばいいだろ。たまたま空いてたから、貸してやるだけなんだかr「Wow!聞いたかい居候!これで今日から君も俺とルームメイトだよ!一緒に映画見よう!」……アルフレッドの馬鹿ぁあああぁあっ!」
ツンデレしていたアーサーをスルーして、私の手を取るアルは無邪気に笑っているけれど。え、わざとなの?それとも敢えて空気を読まなかったの?
そんな時、フランシスさんとマシューが会話してたなんて気が付かなかった。
「ま、アルがあの調子なのはいつもの事だけどさ…お前がムキになるなんて珍しいじゃない、マシュー?」
「……そうですか?」
探るようなフランシスの視線に、にこやかに微笑み返すマシューの瞳にはアルに振り回されている居候が映っていた。
「彼女も、国でしょう?けど忘れられて消えかかってる……僕とは状況は違うけど、なんだか親近感が湧いてしまったんです」
「うーん、そっか。…もしかして恋してるのかなって、お兄さんは勘ぐってるんだけどね!」
上手にウインクしながら、フランシスはマシューを小突く。
からかうような言葉の中には、牽制するような威圧感もあったのだが。マシューは表情を変えないまま、目を細めた。
「……内緒ですよ」
「…あら、そう?」
「大人げないですね、フランシスさん?」
「……お兄さんのは百年越しだもん」
「…え?」
フランシスの呟いた言葉に、驚いた表情を浮かべるマシュー。しかし、呟いた本人は人差し指を唇に当てて。
「…まだ秘密にしとけよ?」
と、今度は余裕ある笑みを浮かべていた。
「よーし!じゃあ、お泊まり記念に蛍光ピンクのケーキを買ってくるよ!」
「馬鹿、こういう時は手作りだろうが!待ってろよ居候いま作ってやるから、」
「やめたげてぇぇえ!
この味覚音痴兄弟ったら、居候ちゃんをどうする気ー!?
もういい、お兄さんが作るから!お前らは部屋の掃除とかなんかしてろよ!」
フランシスさんが急に止めに入ってくれた。ありがたや。
料理を止められた二人は文句を垂れながらしぶしぶ部屋に戻っていく。
「…そういえば、アーサーさん。ドアが直ってないですよ」
「あー、その件については大丈夫だ。近所から修理が上手い奴呼んであるからな。……だからな、居候はちょっと隠れてろよ」
何故に。修理の上手い人から逃げないといけない私はなんだと思われてるのですか。
「…アーサーさんが言うなら、そうしますけど」
「居候、」
「…ちょっと不服なので、家出します。けど夕飯までには戻ります。フランシスさんの料理好きですから!フランシスさん好きですから!」
「それは家出なのか…?って、何さり気にワイン野郎に告白してんだよ馬鹿!俺にも言ってみろ、俺の料理好きって言えよぉおぉぉ!」
「……あー、善処シマス」
泣き叫んでいるアーサーさんを置いて行くのは申し訳ないが。この際ちょっとふらふらしたい。
ぶっ壊れた扉に気を付けながら、私は外に飛び出した。
***
「…で、アーサー?なんで急に外に出してやったんだ?」
「うるせーな髭野郎。…アイツには会わせたくないんだよ」
「あ、そうか!お前まだ同盟の事引き摺って」
「ちげーよ!…居候が思いだすかも知れないからな、念の為だ!」
「……思ったより、ライバル多いな!」
「……なんの話だよ?」
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