半透明な居候。
アルフレッドさ
かくかくしかじか。
ひとつ屋根の下で、奇妙な同居生活が始まってちょっと経ち。
アーサーさんは何かの会合(黒いマントを着込んでいたけど)で留守でフランシスさんはご飯を作った後、実家に一時帰省中なお昼過ぎ。
ピンポーン、ピンポーンとチャイムが鳴っている。
どうしよう。
***
「訪問販売、身に覚えない蟹、アンケートは即刻断わらないと…」
アーサーさんが言うには、チェーンをしたまま開けても最近の手口はすぐチェーンを切るから用心しろとの事ですが。
ピンポピンピンピンポーン、
なんだろうこの軽快なリズム。
「Hey!開けてくれよアーサー!この前貸してくれたなんか古い本読んでたらページが無くなってたじゃないかー!」
あれ、もしかしてアーサーさんの友達だろうか。
「教えてくれよアーサー!あの後アームストロングはどうなったんだい!まさか彼も死んでしまうなんてジョークはよしてくれよ!」
声がデカいよ。近所迷惑だよ。あとさっきからチャイムの音聞こえないんだけどもしかして壊してない?ねぇ、私のせいになるのかな?
「もちろんハッピーエンドなんだろー!?」
「…くぎゅっ」
扉を開けようとした私の顔面に。扉が倒れてきた。倒れてきたんだよ。
「あれ、建て付け悪いんじゃないかいアーサー?君ん家ってお化け屋敷みたいな外観だけど流石に、……っ!?」
「……あ、ども」
なんとか扉から這い出した私に、背の高い青年は驚愕に綺麗な空色の目を見開いて。
「う…うぁあぁああ!なんで君まさか幽霊、OHHHHH!怖いよー!コワいよぉぉお!まさか直に見えるなん、」
「あ、いや私幽霊じゃないです」
「なーんだ、そうなのかい?」
えれぇあっさりしてるな。さっきまで泣き叫んでた彼はけろっとして、扉をどかしてくれた。なんか言い表せない感情に支配されながらも、堂々と人ん家に入って来た彼を見上げる。
「ん?それなら君は誰だい?」
「あ、私は居候と申します」
「なんか菊みたいな反応だなぁ!」
***
俺は、アルフレッドさ!
***
またえれぇデッカく名前を名乗ってくれましたね。
「これがうちのサイズだよ!なんでもビッグなのがお得だろ?」
「はぁ…そうですか?」
理解しかねるが、とりあえず頷くとアルフレッドさんは慣れた手付きで引き出しからコーヒーセット(初めて見た)を出すと「アメリカンで構わないかい?」と聞いてきたので、また頷いた。
「居候って、まさかアーサーの…」
「同居人ですねぇ」
「うん?ルームシェアって事かい?」
「近いんですけど、私家賃もなんも払ってないですよー本当にただの居候で、」
「へぇ!じゃあ君の国はどこに有るんだい?」
あ、この人もやっぱり同じなのか。私の目の前にはいつもならアッサムが入るティーカップに真っ黒の液体が注がれていた。
アーサーさん、紅茶しか飲ませてくれないんだよね。まぁ美味しいからいいんだけどね。
「多分、無いと思います。土地はあるかもしれないけど…私の事はみんな忘れてしまったみたいで、」
「…俺、君に会った事あるかもしれないな」
明るく微笑んだ、アルフレッドさんの言葉に私は顔を上げた。私を、知ってる?
「それいつですか!」
「わっ、急にどうしたんだい!」
「教えて下さい!私、まだ…っ」
消えたくないの、
「
…百年以上前じゃないかな」
…ん?
「…あの、アルフレッドさん」
「アルでいいよ!なんだい?」
「分身の術とか、使えますか」
「俺はninjyaじゃないぞ」
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