半透明な居候。
ギルベルトと遭遇
あぁ、良い天気だなぁ。
空を見上げて居候はほころぶ。あんな真っ白な世界の後にこんなに青い空を見ると、あぁ私は帰って来たのだ
「ちょっ…おまっ…!」
と思わずツッコミを入れたくなる気分なのを押し殺して、辺りを見渡すとどうやら森の中に
「重てぇから!俺様に恨みでもあんのか…!」
む、失礼な。
これでも私は半透明なのだから軽いとまでは行かなくても、重たいだなんて言われる筋合いは、な…い……?
「あ、あれ」
体が、ある?
「ある…!」
自分の体を、自分で抱き締めて感激する。あぁああ!と思わず叫ぶと、私の下でまた呻き声が聞こえた。
「お前、何言って……あ」
「…何か?」
まるで知り合いだったような、顔を思いだそうとするような視線だった。
しかし、該当がなかったのだろうか。彼はまた憤慨したような口調で「退けっつったろーが!」と強引に立ち上がった。
「うぉ」
「ケッ、俺様の上に乗るのはひよこだけで十分だぜ…」
「…格好つかない人ですね?」
「ほっとけよ」
*****
どうやら、彼はギルベルトと言うらしい。
彼は只今絶賛撤退中だという。
「お前、なんにも知らねーでこんな所うろついてんのかよ!危ねぇなー」
「はぁ…そもそも…」
なんとなく、ここはアーサーさんの家からとても遠い所なのではないかと思えてきた。
場所だけじゃなくて。
「あなたも、国ですよね」
「ん?まぁ…国っちゃ国か」
少し間があったが、彼は気だるそうに頷いてまた赤い目で私を見下した。
「それで、お前は何だよ」
「私は…ええと」
名前はさっき名乗った。
アーサーさんの所に居候してます?なんか違う、私実は半透明で…今は違う。
あれ、どうしょう。
「……」
「ふぁ」
ギルベルトさんが、間の抜けた声を上げて急に慌てふためく。
「なななな…、泣くなよ…!」
「ふぁ」
しまったうつった。
「…なんで私、体戻ったのに」
結局自分の事は分からないままじゃないか。
絶望しようとした時だった、ヒュン、と目の前を何かが通り過ぎて。
近くの木が破裂した。
「ばっ…!馬鹿野郎、早く逃げるぞ!」
ギルベルトさんはそう叫んで立ち上がって――――未だに呆然としている私を一瞥し、ばつが悪そうな顔をして私をひっつかんだ。
「よく分かんねーけどよ!とにかく今は逃げろ!」
逃げる?
彼の顔を見上げると、意外にも彼は余裕のある表情で私を見ていた。
「分かんねーなら、いっぺん逃げちまえ!自分が手いっぱいの時はそれでいいんだよ!」
「…でも」
「捨てたりしねーから、行くぞ!」
今の現状から、逃げる事だけを言ってる訳じゃないのか…
ぐいぐいと引っ張られる感触がなんだか懐かしく感じる。
何だろう、この既視感は。
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