半透明な居候。
飯ウマ二人に
***
じゃ、また気が向いたら突っつきに来るしー!それが、フェリクスさん達の最後の言葉だった…
「不吉なナレーション入れんなよ!普通に帰ったって言え!事実を伝えろ!」
「尺の関係で見送り部分を全面カットしました」
「それは伝えなくていい…!」
アーサーさんが何やらツッコミ疲れているらしい。なんでかな。私には訳が分からないよ。
*****
「流石に法国の作る飯はうめぇあるな。老酒なら持ち合わせあるから、飲むよろし」
「お褒めに預かり光栄だな…って、まぁ、お兄さんだからね!当然でしょー?」
「…だったら我は…お爺…否、まだ兄貴で行けるあるっ!」
「…何やってるんですか、お二人とも」
飯ウマ二人に挟まれた。
パーティーというか、まぁお庭でご飯を頂いていた訳ですが。何やら良い匂いがするので、二人の居る机に座った。
「おー、居候も来たあるな!いいから飲むよろしー」
「わぁ、有難う御座います」
出された飲み物を眺める私の前に、静かにワイングラスが置かれた。見上げるとフランシスさんがウインクを、ってやっぱり上手いな。今度練習してみよう。
「お兄さんのも飲んでよ、今日のは二十年ものの…」
うんたらかんたら。
何やら葡萄の産地と、ワインの香りと柔らかさがどうとか言ってる気がするのだけれど、分かりません。いや、普通に分からないんです。すみません。
流石に察したらしいフランシスさんが、苦笑した。
「…まっ、難しい話は良いから飲んでみてよ?」
「わー、頂きま…」
「没収だ、馬鹿」
ひょい、とアーサーさんが私の手からワイングラスと老酒を奪ってしまった。なん…だって…
反抗しようとした私を、ジト目で見るアーサーさんはお酒を返してくれる気はないようだ。
「お前なぁ、一応女なんだから……こんな、野郎ばっかの時に飲むなよな」
「え、何故に」
よく分からない。けど、アーサーさんは溜め息をつくと、私の老酒とワインを飲み干してしまった。うわばみ…!
そしてどこから出したのか、トンカチを持って「だいたいお前は〜」と話始めたけど、
え、酔っ払ってる?
「…〜だから、って聞いてんのか居候っ!!男ってのはなぁ、」
「や、あの…付かぬ事を伺いますが…そのトンカチはどなたの…」
はた、とアーサーさんが手の中の物を見直した。
「あぁん?……ルートの奴忘れてったのか…」
ルート、さん。
あれ?
「ルート……」
私が呟くと、何故かフランシスさんが咳き込んで「あれっ、花粉症かなっ」と辺りを見回した。わざとらしいな…
トンカチを見て思案してたらしいアーサーさんが「取りに戻って来たら…」と呟いて私を見る。え、なんですかさっきから。
「…あー、居候?ちょっとアル達と部屋で遊んでてくれないか?ちょっと用事が…」
「……分かりました」
トンカチ返すくらいで、一体どうしたんだろう。
そして、アーサーさんとフランシスさんが目配せしている。
ざわざわ。
これは、気になる。
…と、なれば手はひとつだろう。
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