何にも囚われない世界、変わらない景色の中の1
「ちょ、何事!坊ちゃんのストレスと鬱憤が塊になって降ってきたとか!?」
「そんなものが具現化してたまるか!!」
「もしくは変態エロニの煩悩か!」
「百八つも降るの?!耐えられない上に僕らどころかセインガルドごと滅びそうなんだけど!!」
「ま、まさかの世界崩壊フラグ……」

まあ、結論から言わせてもらえば、俺たちは襲い来る隕石を死に物狂いで避けて避けて避けまくった。何故かリアラとハロルドの立っている場所にだけ降ってこないのは、隕石も俺達の力関係と言うものを見事に理解していたからかと思わずにいられない。うん、やっぱり女性は強いな!
ぜえぜえと肩で息をする男組の周りは、そりゃもう清々しいほどに一面土がむき出しとなった。

「ハロルド!これもう人災じゃんか!十八年前の災厄を身一つで再現してどーすんだよ!お母さんはあなたをそんな子に育てた覚えはありません!」
「あら、子供は親の姿を見て成長するものよ。いきなり森で謎の小爆発起こしたレイスに言われたくないわ」
「さーて、明日はこの辺りに種でも植えるか。ぷち菜園作ります!」
「話を逸らすな」

がすっと脳天に空手ちょっぷ。骨仮面から致命的な精神ダメージを受けた!

「レイス、もうジューダスは仮面をつけてないんだけど……」
「!!」
「明らかに今頃気付いたってカンジね」
「エミリオ……本体どうしたんだよ!?失せ物か?置き忘れか?おまわりさー……」
「あの仮面を一体何だと思ってるんだ貴様。人工知能搭載か、イン○ル内蔵か?」
「ちゃららちゃんっ♪って音楽と共に近々CM出演すると俺は信じてる」
「ちょっと……オカルトよね?竜の頭骨なんだもの」
「あら、それいいアイデアね!今度作ってみようかしら」
「まるきりジョークに聞こえない、っていうか限り無くマジに聞こえるんでやめましょうよハロルド。これ以上気味の悪いもの量産させないで下さい」
「そういや皆、話逸れてないか?」

お前が言うかっ!とロニに突っ込まれた所で軌道修正。
ああ、このテンポが懐かしいぜ。しばらくはエルレインのボケを相手にし続けてたのもあるから余計に新鮮だ。

「ったくよお、いきなりあんな爆音響いたら驚くに決まってるぜ」
「自然破壊か?人為的かつ故意な災害か?」
「俺の全身全霊をかけてピンポイントでソフトに晶術使ったから大丈夫だって。おかげで久々に疲れちまったぜ」
「あー……一体何から聞けばいいんだろうね。とりあえず元気そうでよかったよ」

苦笑を浮かべたシャルに、俺も小さく肩を竦めた。むしろ聞きたい事だらけなのはこっちの方だ。まさか、生身のシャルがここにいると思わなかったし。

「ま、話はおいおい聞かしてもらうさ。時間はたっぷりあるし、やらなきゃなんない事も使命も世界の危機も全部ないんだ」

カイルとリアラが微笑ましく手を繋いでいる。そんな二人にニッと笑って、

「おかえり!」
「それはオレ達のセリフだよ!……おかえり、レイス!!」

掴みとった未来を、何よりも嬉しく思った。



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