本領発揮1 「やっとノイシュタットに着いた〜!」 ようやく霧深い尾根を抜けた先にあった街は、綺麗に舗装された洒落た所だった。 だが、何だか港の方が騒がしい。遠目で分かるほど人が集まっていた。 「何だ、ありゃ?」 「とにかく、行ってみようよ」 そう言って駆け出したカイルは、近くにいた女性に声を掛けた。 「ねぇ、何かあったの?」 「船の修理がまだ終わらないそうなんです……」 ということは、ここに集まっているのはあの船に同乗していた人々だろう。カイル達の姿を見て、一人の船員が駆け寄ってくる。 「申し訳ありません。修理に手間取っておりまして……すいませんが、少々お時間をいただけますか?」 それだけ言うと、手が足りないのか他の船員に呼ばれて、走って行ってしまった。 「おい、どうするよ。この調子じゃ、いつ船が出せるか分かったもんじゃないぜ?」 「だが、ハイデルベルグへは海路で行くより他に方法がない。ひたすら待つしかないだろう」 「う〜ん。ただ待ってるだけってのも退屈だし、どうしよっか?」 「いっそ闘技場にでも行くか?ノイシュタット名物の一つだし」 「闘技場!?」 カイルが目を輝かせながらレイスに問いかける。 「上手く優勝すれば賞金も手に入る。暇もつぶせて資金も稼げて一石二鳥じゃん?」 「やめておけ。今の実力では負けて怪我をするのがオチだ」 ジューダスにそう言われ、とたんにシュンとしてしまうカイル。 その雰囲気がなんとなく可哀相になって、レイスはある提案をしてみた。 「じゃあジューダス、俺とお前でタッグバトル出てみないか?」 一瞬の間。 ジューダスは、突拍子もないレイスの提案に言葉を失ってしまった。 「ええっ!?ジューダスとレイスが出るの?」 「確かに、二人ともすっごく強いものね!」 「でも、どうしてタッグバトルなんだ?シングルバトルでも十分いけるだろ」 「俺はコレだからさ。やっぱ一人じゃちょっとキツい」 レイスはそう言って自分の目を指差す。その頃になってようやくジューダスが言葉を発した。 「待て、なぜ僕が出なければならない。それにタッグバトルは男女が組むものだろう」 「こういう時に、俺のこの女顔使わなくってどうするよ」 だが、ジューダスはなかなか乗り気にはならない。レイスは奥の手を出した。 「……そういえばさ、カイルの実家って孤児院なんだろ?お金はいくらあっても足りないくらいだと思うんだけどなぁ」 ぴく、とジューダスの肩が反応する。 「うん、昔から雨漏りが酷くって。屋根の修理もちゃんとしたいんだけど、なかなかそこまでお金が回らないんだ……」 「ホント、ルーティさんには苦労かけっぱなしだよな……」 レイスはダメ押しとばかりに、憂いを前面に押し出した表情を作って大きく息をついた。 「ルーティさんの為にも孤児院の維持費送ってあげたいよな……闘技場の賞金をあてにしてたんだけど……でも、ジューダスが嫌だって言うんなら仕方ない、か……」 「……っ、ああもうわかった!!出ればいいんだろう、出れば!!」 それを聞いた途端、さっきまでの表情はどこへやら。レイスはニヤリと口角を上げる。 「……言ったな?」 「……言わせたのはどこのどいつだ」 「「「(ジューダス、頑張れ……!)」」」 「男に二言はない!ってコトで決定。俺とジューダスでタッグバトルマニア挑戦してきまーっす」 「いきなり一番難易度の高い物を選んでどうする!!」 「だってアレが一番賞金高いし。勝てば32000ガルド。たぶん屋根の修理費くらいなら楽勝だ」 そう詰め寄られて、言い返せなくなる。レイスはそんなジューダスを引っ張って闘技場へと歩き出した。 「レイスってジューダスの扱いが上手よね」 「丸め込んでいる気がしないでもないんだが……」 「二人とも!早く行こうよ!!」 ロニとリアラはカイルに引っ張られて闘技場へと歩いて行った。 [back][next] [戻る] |