3 「そういやディムロス、ここには何かあるのか?」 うーん、ここの回線は迂回させて……。 『肝心なことを言い忘れていたな。(誰かのせいで)ここには、第四のソーディアン、クレメンテが安置されているんだ』 『クレメンテ老がいれば、大幅な戦力アップも見込めますからね』 アレは……コレと連結させよう。代用はきくだろうし……。 「ソーディアンがもう一本……今度こそ売り飛ばしてやるわ!」 『ルーティ、お願いだからこの緊急事態にソーディアンを手放さないでちょうだいね(汗)』 「フィリア、コレちょっと押さえててくんない?」 「は、はいっ」 「ところで、お前達はさっきから一体何をしているんだ?」 げしっ! 「うぉぁっと!危ねぇだろ!かなり慎重な作業してる真っ最中な友を足蹴にするとかお前、人として最低だぞ!?」 「やかましい。とっとと質問に答えろ。それと勝手に友人などとほざくな。僕は認めた覚えはない」 「それって酷くね?こうなったら貧乏生活の中、一人黙々と子供の給食費のために内職するお母さんの背中な哀愁を漂わせてやる!」 ちまちまと回線を繋げてー、外してー。我ながら地味な作業だ。ウジウジイジイジと……。 「あーあ、シャルってきそう……(ポツリ)」 『いきなり何なんですかそのすっごく不名誉ちっくな動詞!?』 「【シャルる】1.ウジウジしている。イジイジしている。ジメジメしている。2.千年前に存在したと思われるピエール・ド・シャルティエが存在していたという意を表す動詞。《広辞苑第〇版より抜粋》」 『嘘だーッ!!』 「いやいや、最新版に載ってんだって。ついでに言うとメアリーさんの自伝にも」 『嘘、じゃないかもしれない……ハロルドなら書きそう……(沈)』 「おいスタン、今のはテストに出るから絶対覚えとけよ」 「うん、わかったよ!」 「待てスタン。おそらくここはツッコむところなんじゃないか?」 「なるほど。そうかもしれませんねマリーさん!」 あれ、何で二人して更なるボケツッコミの極意を極めようとしちゃってるワケ?俺も入れてくれなきゃ寂しいだろー! 「アトワイト、もうアタシの手には負えないわ……孤児院に帰りたい……(疲)」 『ルーティ…、』 「負けるな!負けてはいけませんのよルーティさんっ!!百本レシーブを百セットこなした先に見える未来がきっとあるのよ!(注←シェイド)」 「えっと全部で……レシーブ千本?」 スタンのおそらくは狙ってはいないだろう本気なボケと同タイミングで、ルーティに胸倉掴まれる俺。 100×100は一万だな、スカタンよ。 「うわぉ、ルーティさん……?(汗)」 「誰のせいでアタシがこの年で心労と胃痛に悩まされてると思ってんのよシェイドッ!それとスタンッ!アンタ幼児期どころか胎児期からやり直してきなさいこの脳みそカス男っ!!」 わいやわいやと無駄に盛り上がる(?)俺達をを横目に、リオンがフィリアに同じ質問を繰り返す。 「……で、一体何をしていたんだ」 「この装置を一時的に再稼動させるそうです。これを使えば、おそらくはラディスロウの最深部に行けるからと……」 「そんな事ができるのか、アイツは」 「ですが、この辺は主電源が落ちているみたいで、回線を繋ぎ合わせても動力が引っ張って来れないんです」 「そーなんだよ。それで手間取っちまってさ」 ワープゲートを覗き込むリオンの頭をガシッとわしづかんで、二人の話に割り込んでいく。 「気安く触れるな!!」 「何だよ坊ちゃん敏感肌?石鹸は弱酸性のビ〇レだな……じゃなくて」 自分でふっといて自分で流すのはちょっと寂しいが。 「そこで俺は考えてみた!スタン、ちょっとディムロス貸せよ」 「ん?いいよ」 『ま、まてスタン!自分の武器を気軽に他人に貸すなっ!!』 「何言ってんだよディムロス。シェイドは他人なんかじゃなくって、仲間で友達だよ!(無駄に爽やか光線)」 『そういう事ではなくてだな…、』 「往生際が悪いぞ、ディムロス!」 『………』 ディムロスは自らの敗北を悟ったようだ。(笑) 「さてと」 エネルギーっていやあ普通は電源だから、ライトニングでも上手い具合に当てりゃいいかもしんないが、ハッキリ言ってレンズエネルギーの方が使い勝手は格段にいい。 なら、小さくてもパワーは絶大なレンズを持つソーディアンが三本もあるんだから、これを使わない手はない。 「悪いなディムロス。ちょっと背面カバー開くぞ」 『な、!?』 とりあえずちゃっちゃと回線繋いで……向こうに着いたら主電源入れちまえばいいから、片道六人分でいっか。 「う〜ん……リオン、シャルティエも貸して」 「チッ……早くしろよ」 「りょーかい、了解ー。“グフッ!サンプルちゃんの解剖よ〜♪”」 『イヤァァァァァァァッ!!』 アレはこう繋いで、コレはこの奥だろ?向こうは全部切ってあるから……。 「なぁシェイド。何でディムロスとシャルティエなんだ?アトワイトもあるのに」 「例えソーディアンでも女性の背面カバー開くなんて破廉恥だろ。俺は今ここで声高に自分をフェミニストだと主張する」 『あら、女性を大切にするなんていい心掛けね♪』 「それにルーティから何か借りてみろ。絶対十・一って言われるに決まってる」 「……ナルホド」 「チッ、バレたか……」 やっぱりかよ。しかもこの場合俺は何を返しゃいいんだ。レンズか。 「よし、準備できた。はーい、お二人さん。ちょっと痛いかもだけどガマンしろよ」 『『!?』』 一応は心の準備にと話しかけた直後、最後の回線を繋ぐ。え、結局準備する暇ないだろって?マイペース=俺のペース。全ては俺が基準だ。(かなり自己中) 『くッ……!』 『うわっ……!!』 痛みはないけど、たぶん何らかの違和感として伝わってんだろうなぁと、他人事だから呑気に構えていると、 「……っ!?」 カランッ 「シェイドさん?どうかなさったんですか?」 『いきなり我を取り落とすな。驚くだろうが』 なぜか、しっかりと柄を握っていたはずのディムロスが、乾いた音をたてて床に転がっていた。 「あー……悪い。とりあえず、終わったから回線外すわ」 手を握ったり開いたりするけど、特にといって違和感はない。あえて言うなら、何となく気怠いような。 前にもこんな事があったような。 「おい、ソーディアンはもういいのか?」 「ん?ああ、バッチリ。ありがとな」 回線を元通りに繋ぎ合わせ、背面カバーを閉じてマスターに返す。 うん、ゲートもちゃんと起動してるな。 「シェイドってホント凄いな……」 「田舎者にかかれば夜中のキッチンでエサを求めて徘徊するゴキだってスゴい部類に入るんじゃねーの」 「どういうイミだよっ!」 「あ、悪ぃ。この言い方は世の田舎者さん達に失礼だったな。どこぞのスカタンに限定するの忘れてたわ」 些細な事だったから、表面上ではふざけあいながらも、内心今からやらなくちゃならない諸々を考えていた俺は、この疲労感を大した事とは考えなかった。 だって同じ時を二度も歩むなんて贅沢な事してるんだ。救えないものがあって後悔するなんて真っ平だった。 忘れられてしまったあの日の彼女の忠告が最後のストッパーだったとは、もちろん知る由もない。 [back][next] [戻る] |