3 船室の隅で膝を抱えるスタン……は放っといて、それを励ますフィリアに向かって、さっきの話のオマケをちょっと。 「実はさ、天地戦争時代の遺産みたいのが、もうちょっと行った所にあるんだ。カルバレイスの少し手前に魔の暗礁って呼ばれる所があって……そこに、沈められてるらしい。かの時代に活躍した輸送艦が」 『『………!?』』 あれ、これはもしかして地雷踏んだ? 『お前、何故それを!?』 「僕も疑問だな。お前は色々知りすぎだ」 ディムロスに続けるように、不機嫌な声が降って来る。結局ハーブティー作りそびれた。 「天地戦争のことといい、神の眼の事といい……まさかグレバムの手の者じゃないだろうな?」 「俺がスパイじゃないかって疑ってるんだ」 「ちょ、シェイド!リオンもよせよ!」 交わす視線の間に流れる険悪な雰囲気。そりゃ多少は疑われても仕方ないかなとも思ってたけど、スパイ疑惑は何つーか……マジでムカつくんですけど? 「ハーメンツでお前とスタン止めたので、多少は俺の実力も分かってんだろ。しかも晶術も使える。俺が敵だったら、こんなトコで呑気に船旅なんかしてねーよ。お前ら片付けてやることやるわ」 「『『!!?』』」 「へ、晶術って……シェイドも使えるのか?」 俺とリオンを何とかなだめようとしていたスタンがマヌケな声を出したおかげで、何か少し肩の力が抜けた気分。 あー、今のは俺らしくない、反省。冷静になろう。リオンにつられて苛々しても仕方ない。 「……アンタ、何でいきなり反省ザルのポーズなんかしてんのよ」 「いや、ちょっと自己嫌悪中。悪いなリオン」 『ほら、坊ちゃんも謝って!』 「フン。それより、いい加減に晶術を使える理由を話せ」 『坊ちゃんっ!』 反抗期真っ直中な息子とその母親か。 うん、ここは俺が大人にならなければ。 「いいんだよシャルティエ、俺が大人気なかったんだ。リオン君の性格が螺旋階段のごとくツイストしまくってるのを失念して、同レベルで言い争った俺が悪かった。(白い歯を輝かせながらの爽やかな微笑み付き)」 「〜〜〜ッ!貴様ぁッ!!」 うわぉ。リオンのボルテージが上がる上がる。 「ツイストぉーッ!!」 「黙れッ!!貴様のその口永久に閉ざしてやる!!」 もう一押しがどうもかなり利いたみたいで、再び抜刀。 「ふ、二人ともケンカはよせよ!」 「ケンカじゃねーよ。スタンもやるか、鬼ごっこ。リオンが鬼で、捕まった瞬間に人生終わるけど」 「誰が遊ぶと言った!!」 「私もやるぞ!」 「さっすがマリー♪」 「やめときなさいよ。そんなガキくさいのに付き合っても疲れるだけよ」 「最後まで逃げ切ったら奴には賞金一万ガルドな。ちなみにリオンが払うから」 「よーし、本気でやるわよー!」 「勝手に決めるな!!」 『ルーティ、あなたね……(汗)』 『って、ディムロス!ポイント近付いてるんじゃない!?』 『説明している時間はないか……。(←主に、ってか全てシェイドのせいで)おい、お前たち!ソーディアンを持って表に出ろ!』 「何だよディムロスまで。ケンカならいくらでも買うぞ。ちなみに返品不可だけど」 「返せないじゃなくて、返さないのか?」 「もちろん。あるイミ十倍返しでもあるけどな」 『いいからとっとと外に出ろ!!』 最後のディムロスの怒鳴り声は、俺達四人の鼓膜に瀕死のダメージを与えたようだ。 [back][next] [戻る] |