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シェイドの眠りが、普通の人間の眠りと違うことは三人ともに理解していた。眠りの淵に誘われるように徐々に意識が遠退き、十分な睡眠欲を満たした身体がこれまた徐々に覚醒へと導かれるわけではなく、まるでスイッチを切り替えるように動作を停止させたり再び活動を開始させたりする。
だから覚醒直後のシェイドが目にも止まらぬほどの速さで身体を起こしたとしても、何らおかしくはないのだ。
その右手が、すぐ隣で佇んでいたハロルドの喉元を襲ったりしなければ。
「……ッ!!」
ダンッ!と大きな音を立てて壁にたたき付けられたのは、直前に辛うじてハロルドを庇い身代わりになったシャルティエの手首だ。シェイドのあの速さに間に合ったのは偏に、幾分か自分の方がハロルドの近くにいたというただそれだけの理由。ただのラッキーである。
それくらいにシェイドの動きは俊敏であり、理由がまるでわからないが今この時の彼は本気だった。
ジューダスが彼の背後から首筋に剣を添えていなければ、手首を捕らえていない方の左手が確実にシャルティエの腰に帯びていた剣を奪い取って何らかのアクションを起こしただろうと、そう予測できるほどに。(そのアクションが何だかなんて、予想でも考えたくはないが)
「珍しく寝ぼけているのか?冗談はせめて僕たちが許容できる程度のものにしろ。こんな、笑えない」
「坊ちゃん」
そう、ジューダスは背後に立っているからわからないのだ。
今のシェイドがどんな目をしているかを。
「ヤバいと思ったらすぐ逃げてください」
「はあ?」
たとえ顔を見たとしても、把握はしきれないだろうけど。
(だって、僕たちですらわかるのはただ一つだけ)
シャルティエに突き飛ばされて尻餅をついたままのハロルドは、らしくもなく唖然とした様子で事態を見つめるだけだった。
それも仕方ないだろう。何故なら、
「未確認の非天上人が三体。武器、レンズの所持を確認……抵抗は敵対行動とみなすが」
「……シェイド?」
どこまでもあの時と似た、否あの時よりももっと無機質なガラス玉を向けられたのだから。
ああ、懐かしさに浸りたくもない。
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