コングを称える街の人々の声を聞きながら降りてきた陸地。久々に揺れない足場にやってきて少しばかり感覚が狂いそうになったフィリアがふらつくものの、俺とマリーに支えられて転倒は免れたようだ。こんなところでフィリアがこけでもしたら、すぐそこで人に囲まれた筋肉ダルマが漏れなく怒り狂って突進してくることは想像に難くない。

「街を襲っていたモンスターも片付いたようだな」
「ああ、リオン達が頑張ってくれたんだろ」

あの三人なら、俺たちが陸地に帰ってきたことを聞きつけてすぐにやってきてくれるだろうと思っていた。三者三様の態度で、それぞれに出迎えてくれると信じて疑わなかった。
何故、こんな風に呑気に構えていられたのか。

「あ、君たち!」
「イレーヌさん!無事でよかった」

街の方から駆け寄ってきたのは、少し疲れた様子を見せるものの怪我もなく五体満足な様子のイレーヌ。
コングから引き渡され、屈強な船員達に拘束されたまま連れて行かれるバティスタを見て、俺たちの目的がひとまずは達成されたとわかってくれたのだろう。安堵の笑みを浮かべた彼女は、改めてこちらの無事を喜んでくれた。
そして、俺にとっては予想外も甚だしいセリフを口にしてくれたのだ。

「もう船の手配はできているの!あの男はグレバムの居場所を知っているんでしょう?早く聞き出さなくちゃ……」
「イレーヌさん?」
「何かあったのですか?」

街をモンスターから守るために残っためんばーは、スタンとリオンとルーティの三人。
そう、この三人である。

「あなた達が船に乗り込んだ直後に、武装船団の船が一隻近づいてきて……どうもそれにグレバムが乗っていたらしいのよ。スタン君はあなたたちが帰ってくるのを待った方がいいって言ってたんだけど、リオン君とあのレンズハンターの女の子が、その……ぐずぐずしてたら逃げられちゃうからって」

ルーティとリオン。
表沙汰にはされていないし、事実を知るのもごく少数ではあるが、根本的なところで思考回路が似ているせいか妙に息の合う姉弟が手を組んでしまった場合、どこぞのスタンごときで止められるはずもなかったのだ。

「その船を追って、先に行ってしまったのよ……」




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