ちいさな姉弟のふたり旅1
どうしてか、あのお兄さんたちの姿が頭から離れなかった。
村で初めて見掛けた時からどこか懐かしいような気がしていたんだけれど、一度も会ったことがなかったのはホント。
二人に告げた「はじめまして」は嘘じゃない。
でも会ったばかりのアタシたちのためにいっぱい頑張って、病気のルーに薬を持ってきてくれた。一人でよく頑張ったなって、頭を撫でてくれた。
看病疲れで寝てしまって、お礼も言えないままに旅立ってしまった変な二人。
だから、ただお礼が言いたくて。
どこに住んでいるかなんて知らなかったけど、あの服装ならセインガルドの人かもしれないよって言った村のおばさんの言葉を頼りに、少しだけだけど蓄えてあったお金を持って村を飛び出した。

「ねーちゃん、くれすたってまだかなあ?」
「もうちょっとだよ、きっと。ほら、あれがダリルシェイドだ!」

元気になって、外が見たいと言っていたルーと一緒に。

「……ホントにおうちがつぶれちゃってるね」
「うん。18年前の騒乱で、空からたくさんの岩とかが降ってきて、ほとんど埋まっちゃったんだって」

小さな子どもの二人旅というので、船員さんは内緒だよといって船のチケット代をおまけしてくれた。
セインガルドの方でその薄着はちょっと寒いかもしれないよって、子供連れのお母さんがお下がりの上着をくれた。
アイグレッテからどこに行けばいいのかわからず右往左往してたら、うっかり眼鏡をかけた祭司様にぶつかってしまって、余所見していたこっちが悪いのにその司祭様はお詫びだと言ってお茶をごちそうしてくれた。
これからどうすればいいかわからなくて思わず泣いてしまいそうになってたら、司祭様に「何か困ったことでもおありですか?」って尋ねられて。
さすがにもうアタシ一人じゃどうにもならないってわかってたから、例の二人のお兄さんのことを話したら、

「そのお二人なら、クレスタにいらっしゃいますわ。孤児院を経営している私の古い友人の息子さんとそのお友達で、つい最近こちらにも顔を見せに来てくださいましたから。でも、そう、あなたが……」

ルーの頭を優しい手つきで撫でながら、お兄さんたちの居場所を話してくれた。
その後は、ダリルシェイドに荷物を運ぶのだというおじいちゃんの荷馬車に運よく乗せてもらえて、ゆっくりゆっくりだったけど街道を走る。
「馬もすごくおじいちゃんだから、速く走れなくってごめんな」って謝られたけど、「急いでないから平気だよ」って声を揃えて言ったら、大きな飴玉を二つももらった。
ガタゴト揺れるのに合わせて歌をうたったり、途中の水場で汗を流して、うとうとしてた馬にも水をかけたらすごくビックリされちゃって、日が暮れたら荷台の中でおじいちゃんも一緒に三人で毛布にくるまって寝て、そうこうしてたらダリルシェイドなんてあっという間。荷馬車のおじいちゃんにお礼を言って別れたのがついさっきの事だ。
アタシ達の旅はとても順調に進んでいた。
そう、ここまでは。



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