「アンタ達の友情ってよくわかんないわ〜。男って皆こんなもんなの?」
「あらまハロルドさんいつの間に」

何故か頭上から声が聞こえるなと思って視線を上げてみれば、木の幹に寝転がってるらしい桃色のくせっ毛が見えた。

「……重さで気付かないか普通?」
「無理無理、シェイドの怪力って軽く人間の限界を超えちゃってるから」
「気を付けてなきゃ、百キロ程度ならほとんど誤差だな」
「えっ、ホント!?」

底抜けに明るい声が聞こえたかと思えば、担いだ木に軽い衝撃。

「カーイール。何してんのお前は」
「へへっ、楽ちんだ〜!リアラもおいでよ!」

ハロルドに並んで幹に跨がったカイルが、けらけらと笑いながら傍迷惑な事抜かしてやがる。
若いどころかまだまだ遊び盛りなんだから自分の足で歩きやがれ!と言い返そうとしたのだが、これまたタイミング悪く、

「え、で、でも……」

ものすごく乗りたそうな、だけど俺に遠慮してか躊躇いがちに断ろうとするんだけどやっぱり好奇心に負け気味なリアラの顔を見てしまったら、誰が駄目と言えようか。いや、無理だ。
仕方ないか、と胸中で溜め息をつきつつ、視線でカイルに合図を送れば馬鹿なりにも察してくれたのか笑みを深め、リアラに向かって手を差し出す。

「大丈夫だって!レイスだし!」
「どういう了見か後でじっくり問い詰めたい所だが……乗るなら早くしないとダリルシェイドに着いちまうぞ」
「の、乗りたいっ!」
「正直でよろしい」

そんなワケで俺は馬鹿でかい大木を担いだ上に更に三人を乗せて街道を闊歩するという、滑稽で珍妙で奇妙この上ないものになったのだった。

「お前の存在自体が既に滑稽で珍妙で奇妙で不思議な事この上ないから問題ない。多少のオプションで霞んでくれるような相手なら僕はこんなに苦労していないからな」
「坊ちゃんも乗れば?今さらちっこいのが一人や二人増えても変わらねーよ」
「散れ、消え去れ、すり下ろされてしまえ」
「すり下ろ……また斬新だなオイ」
「あーもう二人ともやめて下さいって!僕を抜刀……じゃないや、今は生身だった」

今にも斬りかかってきそうなエミリオからじりじりと距離をおきつつ、間合いをとっていると、隣りでロニが呑気にも欠伸をしたようだ。
あれ、もはやこの光景も日常の一部っぽく認識されてない?
そうか俺が坊ちゃんに殺気を向けられるのはデフォルトと化したか。

「それじゃあ俺も座っていいか?歩くの疲れちまった」
「何をふざけた事を言ってるんだいロニ君。お前はもしもの時の戦闘要員(主に壁)という大事な役割があるじゃないか」
「戦闘要員の後ろに更に細かい役割がありましたね、こっそり」
「あーもうわかったよ!俺はそういう役回りなんだよな!わーかったっつーの!!」

こんな光景をいつも通りだと思える。
そりゃまあ、多少は異質っていうか色々有り得ないのも混ざってたりするかもしれないけど、何よりも平和な日常であって幸せだと、そう断言できるんじゃないかな。
そう、これは俺の求める俺の幸せを、一つの目に見える形にした光景なんだろう。



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