どおん!
という何かが爆発でもしたかのような音に振り向いてみれば、何故だかわからないが盛大に吹き飛んだ土が柱状に天高く舞い上がっていた。

「「「「「………」」」」」
「あら、新手の自然現象?千年経つと不思議な事が起こるもんなのね〜」

まず、有り得ない。
ていうかあってたまるかあんな現象が!と、天才様を除く五人はそう思った。
戻ってきたカイルからダリルシェイドの噂とやらを聞いた後、すぐさま出発したのがつい二時間ほど前だ。まさかそんな序盤で、最初の目的地にさえ着いていない状況で不思議な現象の目撃者になるだなんて、誰が想像できただろう。

「傍迷惑にも新種のモンスターが暴れているのかもしれないな……突然変異の可能性も捨てたいが捨て切れない。まあ、こんな辺鄙な場所だから放っておいても逞しく生きてくれるんじゃ、」
「新種のモンスター!?」
「突然変異ですって!?」
「………」
「ジューダス、かなり本音が混ざってるぞ。面倒くさそうだ、関わりたくないって顔に出てるから」

持ち前の性格ゆえか張り切り出したカイルとハロルドに、「ああこれは完全に巻き込まれたな」と残る四人は溜め息をついた。

「えっと、一応クレスタも近いものね。もし本当にモンスターで街を襲ったりしたら大変だから……」
「そうだな。面倒事はとっとと片付けるに限る……って色々あって勉強したワケだし」
「さっさと行って、片付けちゃいましょうか」

このメンバーのレベルは、一度神を倒した事もあって非常に頼もしい。シャルティエだってソーディアンがなくとも剣技だけは文句ナシだ。メンタル面での問題も、気を許した上下関係のない仲間と一緒なら全力を発揮してくれるはず。

「ああ、……………」

心持ちうなだれながらも、鈍った身体を動かすにはいい機会だと思い直して承諾したジューダスだったが、ふと視界に入った何かに言葉を詰まらせた。
一言でいうとその表情は、何だあれは?といったところか。仮面のない彼は案外考えている事が顔に出やすい。
その態度に何事かと視線を合わせた仲間達も、ジューダスの見たであろうものを目にして、

「新種のモンスター発見!!」

片や眩しいばかりの笑顔で剣を抜き、

「突然変異データ採取〜!!」

片や天上王も裸足で逃げ出しそうな禍々しい笑顔でスペクタクルズを構え、

「ちょ、マジかよ。え、まさかの急展開?」
「……いっそ夢であってくれたらよかったんだけどね」
「が、がんばれっ!」
「リアラ、健気なのはいいが本当に嫌な時は応援するな」

残りの面々はそれなりの反応を返してくれた。
のっしのっしと、つい先程爆音もどきのした森から出てきたのは、明らかに木だった。
しかもデカい。高さは軽く大人四人分はあるんじゃないだろうか。
もしかしたらオーク系のモンスターかもしれないと思わなくもないのだが、どうも様子が違う気がする。

「……街道を進んでる?って、ダリルシェイドに向かってねえか!?」
「街に近付かれたら厄介だね……あの巨体に暴れられたら、綺麗になってるらしい街が廃墟に逆戻りですよ」
「そうなる前に片付ける。五分だ、それ以上はいくら温厚で気の長い僕も保たん」
「いやいやいやもうツッコミきれねえから!誰が温厚で気が長いって?ジューダスまでボケはじめたら俺一人じゃ捌ききれねえんだよ!」
「よっしゃ、やっちゃうわよ〜☆カイル、ゴー!」
「わんっ!」
「ダメよハロルド!カイルは私だけの英雄なの!カイルを犬扱いしていいのは私だけなの!」
「(……シェイドの手掛かりが見つかったから皆テンション高いのかな?そうだよね、そうだよ。きっとそうだと信じるよ。これがデフォルトなんて僕の精神が耐えられないよ!)」

わいわいと騒ぎつつも、各々が最も得意とする晶術や攻撃を放つ準備をしている。なまじレベルが高いものだからその場は戦闘時独特の雰囲気に包まれ、まだ離れた場所にいた謎の大木にも伝わったようだ。
まっすぐゆさゆさとダリルシェイドに向かっていた歩(足があるかどうかは別として)がぴたりと止まった。

「この超時空的天才アイドル、ハロルド様の貴重なサンプルとして永久に有効活用してあげるわ!!」

何か違うネタが微妙に混じってる!と誰もが思いつつ、謎の大木に向かって凄まじい力の流れが生まれたのだった。



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あきゅろす。
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