「……だな。花屋の子が見たのは昨日の昼らしいから、そう遠くには行ってないはずだ。出発するなら早い方がいい!」
「わ、わかった!じゃあオレ、父さんと母さんに言ってくる!」

ガタリと慌てた様子で立ち上がったカイルのセリフに、心なしかジューダスの肩が小さく揺れたように見えたのは気のせいだったろうか。

「アイツは……スタンは、元気なのか」
「……うん。ずっとオレと、母さんと、孤児院の皆と一緒だったよ」
「そうか」
「ジューダス……ジューダスも、孤児院に行かない?」

余計な世話だとわかっていながらも、カイルは言わずにいられなかった。
スタンとルーティに、かつて裏切りのまま生死を分かたれてしまった仲間に、会いに行こうと。
だが返ってきた返事は、小さく横に振られた頭。

「そ、っか……」
「せめて道連れにできる奴を連れてこないとな」
「うん………って、ええ?」
「僕だけが出向いたんじゃ、アイツらの説教を一人で聞くはめになるだろ。シェイドが一緒なら怒りの矛先も分散されると思わないか?上手くいけばアイツに全部押し付けて逃亡できる」
「え、あれ?ジューダスってこんなキャラ……だったかしら?」
「人類、日々進歩してるんじゃねえの?」
「エロニは原始的な方向に退化して、いつかただのエロに成り果てるのよね〜」
「うおいっ!そこで俺関係ねえだろ!!」
「ロニの“二”は人間の“に”だったのね!」
「ちょっと待て待てリアラさーん!?」
「なるほど、じゃあ“ロ”はロクデナシの“ろ”?」
「頭にエロいの“エ”をつけたら完璧ね☆」
「エロいロクデナシ人間って最悪じゃねえかよ!俺の名前付けてくれた両親に失礼だろうが!」
「ごめんなさい、天国のロニのお父さんとお母さん……息子さんがこんな風に育っちゃって……」
「リアラ、何かすごくテンション高い?」
「あのね、レイスの代わりに頑張ろうと思って!」
「あえて頑張る方向が俺弄りってどうなわけ?なあ、なあ?」

リアラとシャルティエも巻き込んで騒ぐロニとハロルドを横目に、カイルにとってはどこか新鮮なジューダスの苦笑が向けられた。
仮面のないその表情は、旅の最後、神のたまごの中では常に見ていたはずだし、この世界で再会してからも常に素顔だったのだが、いつまで経っても慣れた気がしない。それはやはり、まだどこかで仲間であるジューダスとリオンという人間を区別しているからだろうか。

「アイツを見つけるまでには腹を括るさ。だからもう少し……待ってほしい」

だがこの時だけはリオンでもジューダスでもない、シェイドが親友と呼んだエミリオという名前がしっくりくるように思えた。



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