2 男は肉体労働、女は補助的な仕事。性差別してるわけじゃないけど、この場合は仕方ないよな。さすがに土木作業並みにハードな瓦礫撤去を手伝わせるわけにもいかないし。 ……え、何でエルレインは俺と一緒に重労働してるのかって?そりゃあれだ、エルレインさんが世界七不思議をまさかの八不思議にしてしまうような奥の深すぎて実は底無し筒状という何ともカオスなお方だからだ。 むしろ俺が聞きたい。 「ほら、アンタらもお食べ」 うおおおおっ!とムサい雄叫びをあげて男性陣が昼飯へと駆け出して行った後(ちなみに雨と泥と汗に塗れて汚いからと、女性陣にタオルを投げ付けられたりしている)、動く気配のなかった俺達のところに二人分のご飯を持ったばあさんが近付いてきた。 「俺はいいから他の人達に配ってあげて」 「そんなわけにいかないよ。アンタこの間も同じこと言ってご飯食べなかったじゃないか。今日は食べなさい!」 「ホントに腹減ってないんだ。中途半端に食って残しちまうより、丸一食だれかにあげた方がいいじゃんか」 何せ自給率はゼロに限り無く等しく、アイグレッテだけでなく近隣のクレスタにまで色々頼り続けている現状。衣類も食料も、どれだけあっても足りないくらいだ。 「では私も遠慮して……」 「お前は食え。こんなトコまで俺の真似しなくていいんだよ」 俺は元々栄養の摂取は必要ない身体だけれど、エルレインは違うはずだ。リアラと同じ存在だっていうなら、栄養失調に脱水症状なんて普通の人間と変わらず致命的になることだってあるだろう。 しぶしぶといった様子でばあさんから昼食を受け取ったエルレインは、雨のしのげるところへ行って黙々と食事を始めたようだった。 「それにしても、たくさん植えたねえ」 「まあな。今回は手始めに十八本、あの騒乱が終わってから一年に一本ずつのペースで植えて行こうかって話になったんだ」 「もっと植えないのかい?たくさんあった方が賑やかでいいと思うんだけど」 「家屋倒壊時に起こった火事で焼けた上に、瓦礫やその他諸々混じりまくってる土壌だからな。今はせいぜい二十本程度が限界なんだと。それ以上は栄養が足りなくて枯れちまう」 「そりゃ残念だねえ……」 街の人と色々話し合った結果、じゃあ騒乱からの年数分だけ木を植えていこうかって話になって、クレスタの花屋へとエルレインがおつかいに行ってきたのが昨日の事。 ……俺も街の皆も、まるで初めてのおつかいに出す子供を見守る気分だったのは言うまでもない。見た目だけは立派に大人なんだが、どうにも不安で仕方ないんだよ。(結局、ジャンケンで負けた俺が変装したカメラマンのごとくコッソリ後をつけて見守っていたわけだが) [back][next] [戻る] |