「これは、シェイドの……!」
「……ええ。これ前にクレスタでレイスが見せてくれたものよね?」
「ああ、間違いない」
「ラグナ遺跡で坊ちゃんを見つけた時、このミスティシンボルを握り締めてたんですよ」

まさか、という風に仲間の顔を見回すが、どうも冗談ではないらしい。

「……人がやったものを忘れていくなんて、贈り甲斐のない奴だな」
「坊ちゃん、ちょっとショックなのはわかりますけど今はツン発揮してる場合じゃないですよ。こういう時にデレないでいつデレるんですか」
「だからツンデレって言われるんじゃない。デレのタイミングがはかれるくらい世渡りの上手い奴だったら、こんな人付き合いにおいて素晴らしく難儀な性格してないわよ」
「う、うるさいっ!」

言い返せないところがまた悔しい。やっぱりシェイドに育てられただけはあるな、とジューダスは思わずうなだれてしまった。

「ねえ、ジューダスはレイスに会って、ないの?」
「カイル?」
「オレ、レイスが約束守ってジューダスを連れて帰ってきてくれたんだって思ったし、今もそう信じてるよ。だけど……いくらモンスターがあんまり出てこなくても、あんな場所に眠ったままのジューダスを置いていくのはやっぱりおかしいと思うんだ。信じてるんだけど、なんかこうあやふやで……すごく心配で」
「要は、何でもいいから確証が欲しいんだよ。レイスがちゃんと帰ってきてるんだ、ってな」

カイルの上手く言葉にしきれなかった心情を簡潔に纏めたロニは、落ち込み気味な弟分の肩を励ますようにぽんぽんと叩いた。
口先だけなら何とでも言えるが、ジューダスにだってそんな無駄なセリフを考えている余裕はない。シェイドと会った覚えなんてないし、むしろ確証が欲しいのはこっちの方だと毒づきたくなるのを押さえるので精一杯といったところか。
改めて、気持ちを整理する意味もこめて考えてみた。
あの暗闇に包まれた無の世界を。
もしかしてあの時、あの場所に、シェイドもいたのだろうか。耳に届いた音は自分のペンダントではなく、ミスティシンボルの方だったりするのだろうか。
たとえそうだとして、シェイドは必ずジューダスを助けると、あの旅の最後に約束を交わしたのだ。そるなのに顔も見せずに行方をくらましているなんて、そんなのはシェイドらしくないのではないだろうか。

(アイツなら僕を助けた上で一発小突いて、何か余計なセリフの一つや二つ吐いて……そして、一緒に帰ろうと手を差し延べる。僕が知っているシェイドはそんな奴だ)

帰ったら皆に怒られるかもな。そう言って笑いあう光景までもが鮮明に思い出せる。
不意に、怒鳴り声で目覚める結果になった夢のことを思い出して、口元が緩んだ。

「ジューダス?」
「アイツは……ちゃんと帰ってきているさ。この世界、この時代に」

目に見える確かな証拠はないが、自信だけはあった。
ほとんど何も覚えていないが、きっとあの夢の中のように相変わらず馬鹿な言動で周りを振り回しているに違いない。

「やけに自信満々に言うわね。その根拠は?」
「……親友の勘だ」
「「「「「(ジューダス(坊ちゃん)がデレた……!)」」」」」
「貴様ら斬るぞ」

きっと再会する日は遠くない。



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