「むしろ何があったのか聞きたいのはこっちの方なんだけどな」
「そうよ!シェイドは一体どこにいるわけ!?」

至近距離でハロルドに怒鳴られて僅かにのけ反ったジューダスは、シェイドの名前を聞いてはっと表情を改めた。

「お前達と一緒じゃないのか?」
「今のところ、この時代ではまだ会ってないぜ。フォルトゥナ神団が存在しないから俺はずっとクレスタにいたし、カイルもルーティさん……スタンさんと一緒に孤児院にいたからな。前の時と似たようなカンジで旅に出て、リアラと会って、思い出したのがつい三日前だ」
「フッ、また牢屋にでも入れられたか?」
「今回は掴まってねえよ!つーか前だって何も悪い事してねえし!」

喚くロニをとりあえず放っておいて(このあたり、坊ちゃんってシェイドに似てきたと思うんだよねbyネガティブ少佐)、ハロルドの方に視線を向ける。

「こっちの時代にもいなかったはずよ。だからこうやって千年後にぶっ飛んできたんだもの」
「そう、か……」
「私の時は、ホントに前触れも何もなかったわね。天上軍との戦争も終わって、今回の騒動の発端になったレンズ技術は廃止、ソーディアンも封印しちゃって、何となく……そう、忙しい最中にふっと思ったのよ。兄さんもシェイドもいなくなっちゃったんだなあって」

いつだって強気で陽気なハロルドとシェイドが泣いた、あの戦争集結日。規定事項でなくてはならない自分の死を、世界と、そして大事な家族のために受け入れ、散っていった一人の男の姿が、この場にいる全員の脳裏に蘇った。

「ハロルド……」

少しばかり落ち込み気味になったのか、小さく俯いたハロルドを気遣うように呼ぶが、それに「大丈夫」と答えるように首を振っだけ。

「しんみりしちゃったわね。この辺りの話はどーでもいいのよ!」
「どうでもって……」
「大事なのはここからだもの。シェイドもいなくなったって思った自分に、何か変だなって気付いたのよ。だって私は信じていたし、きっとこれからも、死ぬまでずっと信じ続けたのよ、シェイドは私達の所に……あの地上軍拠点に帰ってくるって」
「用済みになった軍事拠点だったけど、僕たちは最後まであの場所に居座り続けたよ。千年経った今でも残されてるのはきっと、そのせいでもあると思うんだけどね」

何せあのソーディアンチームとハロルドが拠点の撤去に猛烈に反対したんだから、重要機密でもあるって勘違いされたんじゃないかな?
そう言ってシャルティエは苦笑した。

「何でシェイドがいないって無意識でも思っちゃったのか。そこを突き詰めていけば、辿り着くのにそう時間はかからなかったわ」
「なるほど。謎は謎のままにしておかない天才様の勝利ってわけか」
「実際、その時の僕は何も思い出してなかったんだ。ハロルドも、ソーディアンだった僕にあの旅の記憶が戻るとは思ってなかったらしくて、一人で黙々とタイムマシンの研究に没頭してたみたいなんだよ」
「で、ようやく未来に行く手段が完成したのはいいんだけど、何かサプライズ的なお土産があったらシェイドも喜ぶかにゃー?と思って、コレ持ってきたの」
「僕ってコレ扱い!?しかもお土産っていうより絶対にハロルドの雑用係だよね、僕の必要性って!」
「シャルティエがたとえ雑用でも役に立つのなんて、シェイドと合流するまでよ」
「しかも使い捨て宣言!?」

かつてシェイドが『シャルっている』と称した状態のシャルティエを慰めつつ、ロニは納得顔で頷いたのだった。

「なるほどな、それで気が付けば自室の扉の向こうで未来への入口がどーんと待ち構えてたワケだ」
「う、うん。出口をロックされてパニくってたところに、ハロルドが千年後に行くって言ったから……まあ、思い出せたから結果オーライなんだけどね」
「それで、何の偶然か皆が合流したラグナ遺跡のてっぺんで、アンタが寝こけてたのよ」

解説終わり!とでも言う風に、ハロルドはジューダスにびしっと人差し指を突き付けた。

「カイルもロニも旅した時には会ってない、私達の時代にも帰ってきてない、リアラも行方は知らないって言ってる。最後の手掛かりはアンタだけなのよっ」
「残念だが、僕もシェイドの行方はわからない。自分自身に何があったかもわかっていないし……」
「ごちゃごちゃうっさいわよ!わかんないならわかるようになるまで洗いざらい喋る!アンタには見えなくても客観的視点を持てるワタシ達ならわかることもあるでしょーが!」

どうもシェイドの行方が知れなくて一番不安になっているのは、意外というか当然というかハロルドのようだ。
バタバタバタと、荒々しい二つの足音が廊下をかけてくる。
ハロルドはそれにちらと視線をやると、足音がこの部屋の前にたどり着いたところで予告もなく扉を開けた。

「え、うわあっ!?」
「きゃっ!」

当然ながら、扉を開けて入ってくるつもりだった二つの足音の持ち主は、勢い余って床へとダイブ。
「大丈夫かー?」とロニがかがんで様子を見ている二人、カイルとリアラは、

「さあ、メンツは揃ったわ」
「ジューダス!?」
「目が覚めたのね!」

ベッドの上で身体を起こしていた仲間を見て、一気に破顔した。



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