一生に一度の人生。
騒乱から十八年、いやもうすぐ十九年になるか、彼らはそれを既に無為に過ごしてしまった。
そして、その真実を改めて街の人々の目の前に突き付けたのは、俺だ。
俺に彼らを慰めるための言葉なんて一つたりともないし、権利さえもない。

『だからお前はガキだと言うんだ』

手を差し延べる事さえできなくて、一緒に頑張ろうなんて無責任にも等しいセリフを言えるわけもなくて、歯痒さに俺まで膝を突きそうなほどの悔しさに、さっきまで掴まれていた胸元に触れれば、硬質なチェーンが指に引っ掛かった。
いつの間にかなくしたミスティシンボルの代わりに持っていた、アクアマリンのペンダントがそこにある。たったそれだけが、落ち込みの坂を転がり落ちるばかりだった俺に何かしらの勇気を与えてくれた気がする。
そしてリアルに頭の中で思い出された、親友の声。

『偉そうに、全てを知った風に語るんじゃない。所詮、僕もお前も十数年しか世間の荒波に揉まれていない子供に過ぎないんだ。いや、お前だけに関して言えば十年にも満たないんだったな。見た目だけだ、見た目だけ』

余計なお世話だこのどチビが。
悪態をついても、記憶の中のアイツは言い返してこない。それが無性に寂しくて、物悲しかった。

『今のお前が思うように、やりたいようにやればいい』

かつて俺があいつに言った言葉だ。
たとえ俺がどんな道を選んでも、信じ続けてくれるんだよな。そう受け取ってもいいんだよな。

『何が正しいかなんて事は考えたりするな。ありそうでなくもない、どうでもいい方向にだけ発達しすぎた脳ミソを無駄に使うだけだ』

あっれ、これって俺の記憶の中のセリフだよな?
何か嫌にリアルすぎるというか、励まされてるのかけなされてるのかわからんのですが。

『気にするな。気にしたら負けだ』

明らかに返事しただろテメェ!
坊ちゃんの分際でやかましいわ!エルレインへのツッコミだけでも大変だってのにお前までボケにまわるな!!

『お前が物悲しいだの寂しいだの気持ち悪いくらいに似合わない事を考えたせいだろう。僕は悪くない』

俺のせいか。
俺のせいだな、すみませんでした。

「どうしたんです、シェイド?さっきからとても複雑そうな表情をしているみたいですが」
「……結論だけで言えば、俺の親友はいつまでも心の中で生き続けてるのがちょっと傍迷惑だなって話」

貴様こそやかましい。それと勝手に人を殺すな。
と、さすがにそこまでは記憶の中の親友も突っ込んでこなかった。



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