話を聞いている間に冷めきったお茶を飲み干したスタンは、天井を仰いだ。

「まさかカイルの旅がこんなに早く終わると思わなかったよ。軽く三年くらいは覚悟してたんだけどな」
「アタシ達が何も知らないってだけで、実際はけっこうな期間になってるんでしょ」
「あ、そっか」

ルーティに苦笑を返し、リアラの方に視線を向ける。

「彼女……リアラさんと、そして一緒に旅した仲間との絆。それがカイルの見つけた大事なものなんだな」
「うん。……合格?」
「当たり前だろ!カイルが自分の力で見つけ出したものなんだ。間違いなんてないさ!」
「そっか……そうだね!」
「よく頑張ったな……おかえり」
「おかえりなさい、カイル」

ただいま、と言うべきなのだろう。
本当に旅が終わっているのならば。

「……まだ、ただいまは言えないんだ。オレの旅、終わってないから」
「カイル?」

そう、まだ探さなければならない。
手に入れたものもあるけれど、取り戻せていないものもある。

「今度は、オレたち皆の大切なものを見つけに行くんだ!」

欲張りかもしれないが、それら全てがカイルにとって、そして仲間達にとって大切なものなのだ。

「へえ……何なんだ、それ?」
「へへっ!まだナイショだよ!」

待ってるだけじゃ何も得られないと、そう教えてくれたのはレイスだった。
レイスはハロルド達の世界でも、十八年前スタン達と旅をした時も、数えきれないほどたくさんの後悔をして、悩んで、苦しんでようやく、自分が関わることで変わる未来を手に入れた。

(だからオレも、もう一度探しに行こうと思うんだ)

リアラの隣で、ロニとふざけ合いながら、ハロルドの実験に巻き込まれないように、シャルティエさんと色々な話をして、そうだ、時々ナナリーにも会いに行こう。
それよりもまずは、早くジューダスを起こさなければ。

「今話したことが全部じゃない。まだ言えない、色んな事があったんだ。でも、それは本当に帰ってきた時に話すよ……皆、話したいことがいっぱいあるんだ!」

それはきっと、スタンやルーティにとってもかけがえのない大切なものだから。

「オレは、世界中駆け回ってでも絶対に見つけだすよ!」
「私も。今度は皆で一緒に歩き出したいの!」
「うんっ」





そして、お互いがお互いに、誰かに、君に、伝えきれなかったたくさんの言葉と、「ありがとう」を送ろう。



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