暑(苦し)い男の黄金魂1
リオンを陸地に残して行くとして、俺が乗船パーティーに入るのだから当然ルーティと二人で街のモンスター討伐にあたってもらうことになる。
気が合わないわけではないんだが、それを認めようとしない姉弟は果たして無事でいてくれるだろうかという心配はあったのだが、

「スタン、皆も!無事だったか!」
「シェイド!一体何が、」
「モンスターだと!?何で街の中で暴れてやがるんだ!!むしろフィリアさんの目の前で何て暴挙に出やがるんだこの一つ覚えな馬鹿供が!!ここはこの俺様の華麗なる技の数々で華麗に人々を守り抜き、英雄として広場に勇敢かつ偉大な男、マイティ・コングマンの銅像を建てることを(以下略)」

諸事情により前述のセリフを吐いた筋肉海坊主という危険極まりない要素を持っていくハメになった俺たちの方が、全くもって大丈夫でない気がするのは何故だろうか。

「へえ、闘技場ではスタンが勝ったのか」
「僅差だったけど、ディムロスが本気だったし」
「今回は俺様もこんなひょろっちいトンガリに油断しちまったが、次はこうはいかねえさ!暑(苦し)く固い友情もはぐくんだがライバルはライバル。必ず勝ってフィリアさんに…(再び以下略)」

イレーヌに船の手配を頼み、マリーは護衛として港まで走ってもらっている間に、俺たちは闘技場の観客を避難させていた。
檻から放たれたというモンスターはスタン達が倒し、海側から上がってくる敵もリオンが食い止めているから街の中心までは辿り着いていない。噴水の近くで即席ではあるがバリケードを作ったと聞いたので、街の人はそこへと集めていった。
身分も、貧富の差も関係なく。
逃げ遅れた何人かは残念なことに事切れていたが、石化程度で済んだ人には回復晶術をかけて、バリケードの向こうに放り込んできた。(というのは言葉のあや、ではなく文字通り男性陣のみ投げ捨てていたのは時間も余裕もないからだと主張しておこう)
そしてようやく残っている人がいないことを確認し、船の準備ができたと報告に戻ってきたマリーには行ったり来たりで申し訳ないが、港へと全速力で走った。
だってまだ、モンスターの襲撃は収まる気配を見せない。

「じゃあ、スタンには街に残ってもらうかな」
「ええっ、俺が!?」
「コングよりお前のが強いわけだろ。街がこの状態なら、より実力のある方が残るべきだと思うんだ」
「……いくらリオンさんでも、初対面のコングさんから事情を聞いてる余裕はないでしょうし」

うん、本音はそこだ。
いきなりコングが現れて、「俺様が共闘するからにはもう安心だ!かかってこいモンスターどもぉぉぉ!!」なんて叫んだところで、リオンの逆鱗に触れるか華麗にスルーされるのがオチだ。その光景がありありと目に浮かぶ。

「俺様は気にしないぜ!むしろフィリアさんを守れるパーティーに入れるなら本望だ!!」

黙れ筋肉タコ野郎。
誰もお前の心配はしてねえんだよ。

「もしかしたら大物を捕まえるかもしれないけど、こっちは狭い船内で戦うことになるから、両方連れていくわけにはいかない。なら剣技云々よりかは単純にうたれ強いのがいてくれる方が助かるんだよ」

実は俺って素早さのわりに体力がスタンより多いという隠れステータスがあるのだが、周りがそれを知る由もないのであえて伏せさせてもらった。(高数値なステータスの皺寄せは恐ろしいほどの運の低さにきていると言っても過言ではない)
回復要員として後衛補助にまわるわけだから、単純に数字の上で見た場合はこれがベストな組分けになる。
それに、ルーティに対してもリオンに対しても緩衝材となりうる存在があった方が安心だ。

「頼むよ、スタン。(二人のストッパー)よろしくな」
「……ああ!任せてくれ!」

頼られると弱いこのお馬鹿なお人好しは、大して疑問も持たず了承してくれた。
まさかこの選択を後で激しく後悔するはめになるなんて、この時の俺にわかるはずもなかった。



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あきゅろす。
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