「二人の話を聞いてて、オレも何だか変だなって思ったんだ。だって、レイスがこんな所に仲間を放ったままどこかに行くなんて考えられない」

少なくともカイルの知っているレイスは、そんな事はしなかったはずだ。以前ウッドロウから聞いたシェイド像を考えれば尚の事。

「それもそうね。シェイドだったら、バリアの一つや二つや張っていくでしょうし」
「だな。じゃ、とっとと連れてくか!ダリルシェイド、に……、って」

と、ここにきてようやく重大な事に気付いたロニ。

「ダリルシェイドのちっせぇ宿じゃ、俺達全員は泊まれなくねぇか?」

間。

「あーっ!ど、どうしよう!アイグレッテは遠くて連れて行くの大変だし……やっぱりクレスタしかない?」
「あら、じゃあ私達の乗って来た『トラベラー☆ラブリーウサ子三号機改良版その2ピンクバージョン』に乗せればいいじゃない。ちょっとくらいの移動なら大丈夫よ〜♪定員二名だけど」

と、ここで、ハロルドを除く四人の脳内では、様々な思いが交錯していた。

(定員二名……ってなると、一人はジューダスで)
(もう一人は操縦できる人なんだから……ハロルド?)
(……坊ちゃんの身が危険な気がする(汗))
(ってかむしろ、『トラベラー☆ラブリーウサ子以下略』に乗せるのはさすがに可哀相じゃねぇか…?)
(私なら、できれば乗りたくないかも……)
(卑屈全開って言われてる僕だってさすがに『トラベラー以下略』の全貌見た時はけっこうキタんだから……プライド高い坊ちゃんだったら……)
(乗ってる途中でジューダスが目を覚ましたら、ハロルドを止められなかったオレ達って剣の錆決定だよね……?)

結論。

「ハロルドっ!僕とロニで運ぶから!大丈夫!!」
「あら、遠慮しなくてもいいわよ〜☆エネルギーだって十分にあるし」
「いや、でもよ、もしもってコトもあるだろ?」
「なーによー。たかが真性アホの分際で、この私の研究成果を侮辱するっていうのかしら?……アンタ、明日の朝日は拝めないわよ」
「………!?」

ロニ脱落。

「あ、あのねっ、ハロルド。もしかしたら、レイスがここに来るかもしれないじゃない?だから、私達がここにいたって目印代わりに残して行った方がいいと思うの!レイスだったら、たぶんこれを作ったのがハロルドだって気付くでしょうし……」

リアラの(必死な)訴えに、ようやくう〜ん、と考え始めたハロルド。

「それもそうね。んじゃ、『トラベラー☆ラブリーウサ子三号機改良版その2ピンクバージョン』は置いてくわ」
「「「(グッジョブ!リアラっ!!)」」」

(またまたやっぱりどこからとりだしたのか、)メモ用紙に伝言を書き出したハロルドの陰で、男三人がひそかに拳を握ってガッツポーズをしていたのは、わざわざ話すまでもないだろう。

「で、どうするの?クレスタに行くの?」
「……うん。勝手な事してジューダスには悪いと思うけど、オレは……父さんと母さんに、ちゃんと会ってほしいんだ」

どうせ帰ってリアラの話をすれば、自分が旅した時の事が出て来るのは必然。
本当に信じてくれるのかはわからないが、あの二人なら無下にはしないとカイルは思っていた。

「ま、騙し討ちみたいだけど、こうでもしなきゃコイツってば会いそうもないもんねぇ〜」

ハロルドは、書きかけだったメモの最後にクレスタに居る旨を書き足し、『トラベラー☆ラブリーウサ子三号機改良版その2ピンクバージョン』にペタリと貼り付ける。カラフルでビビット色な中に、白い小さな紙は異様に浮き立って見えていた。(それ以前に、緑溢れる中のショッキングピンクな人工物は異彩を放ってもいたが。)

「じゃ……帰るか。クレスタに」



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