あやふやな指針1
「ジューダス!ジューダスってば!」
「全然目を覚まさないわね……」

樹の根元に座り込んで眠り続けるかつての仲間を見つけ、呼び掛けたり揺すったりと手を尽くしてはみたものの、全く目覚める兆しを見せなかった。

「だぁーかーらー、このハロルド特製巨大ピコハンでガツンと一発殴っとけば」
「「「「絶対ダメッ!!!」」」」

数分前に、どこからか取り出したその巨大なハンマーでジューダスの頭を殴ろうとした所、並々ならぬ悪寒を感じたシャルティエがとっさに振り下ろした軌道を逸らしたおかげで、第一撃を防ぐ事に成功した。ちなみに、ジューダスのすぐ上の樹の幹に、その時の名残としてくっきりとヘコんだ後が残っていたりする。

「ただ眠ってるだけだって、しばらくしたら起きるって、ハロルドも言ってたじゃないか。ね?」

とりあえず、シャルティエが何とか宥めてその巨大ハンマーを引かせる事には成功した。どこにしまったのかはやはり疑問だが。

「確かにそうは言ったけどねぇ、いつになるかは分かんないとも言ったはずよ?まさかコイツが自然に起きるまでずーっと待ってるワケにもいかないでしょ」
「でも、もしかしたらレイスがここに来るかもしれない!」

あの時のレイスとジューダスのやりとりを聞いていたカイルとロニは、きっと今のこの状況は、レイスが何かしら関わっているとしか思えなかった。

「………?」

リアラは、ふと視線をやったジューダスの手元に何かが握られているのに気が付き、そっとそばに膝をつく。

「……これ!」
「どうしたの、リアラ?」
「レイスが持ってたペンダント!」

しっかりと握り締められていたのは、二粒のアメジストをあしらったミスティシンボルだった。

「あれ、それってもしかして、坊ちゃんがシェイドにあげたピアスの?」
「ええ、なくしたくないからペンダントにしたんだって……でも、どうして?レイス、あんなに大事にしてたんだから、手放すなんておかしいわ……」

ハッと、シャルティエはリアラと同じようにしゃがみ込み、今だ目覚めないジューダスの胸元を、何かを探るようにポンポンと軽く叩いた。

「……ない」
「アクアマリン、の……?」
「うん。僕がいっつも持っててって言ったから、ずっと首にかけてたはずなんだけど」
「おい、二人とも!一体どうしたってんだよ?」

突然不安の色を濃くしたリアラとシャルティエに、状況が把握できないロニは思わず声を荒げる。それは、カイルとハロルドも同じ気持ちだろう。
仕方なく、別に内密にするような内容でもなかったので、二人は件のペンダントとそのいきさつを話す事にした。
それを聞いてカイルは、

「……やっぱり、どこか休める所に行こう」

きっぱりとこう言った。



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