2 とりあえずファンシーな物体の下から救助されたロニは、自分の上に乗っていたというウサギもどきを見て、そのケバさに再び意識が飛びそうになるのを何とか踏みとどまり、仲間との再会を喜ぶことにしたようだ。 「いや、悪いなリアラ。すぐに思い出せなくてよ……」 「ううん、いいの。それに、思い出してくれただけでも奇跡みたいなものだし」 「ほんっと、『トラベラー☆ラブリーウサ子三号機改良版その2ピンクバージョン』のおかげよね〜☆きっとあのショックで思い出したんだろうし。感謝しなさいよ?」 ばしっ 「グェホッ!?」 「「(いや、絶対潰されるより先に思い出してた気が……)」」 ハロルドがバシバシとロニの背中を叩く中、今まで黙って話を聞くばかりだったシャルティエが控え目に口を挟んだ。 「あの、さ……カイルもロニも、この世界ではシェイドに会ってないの?」 「「………」」 無言が、肯定の証。 クレスタを出てからかなりの遠回りをしてラグナ遺跡に辿り着くまで、世界中をまわってかなり色々な場所へと足を運んだが、らしい人には出会わなかった。 「忘れていたから、どこかで擦れ違っても気付かなかったのかも……」 「それはないよ!会えば、絶対に何かを感じるはずだ」 ナナリーと出会ってどこか違和感を覚えたり、リアラと出会って全てを思い出したように。 「……そういや俺達、レイスがこの十八年間、どこで何してたかも知らねぇもんな」 「でも、シェイドの存在は消されてはいないわ。私もシャルティエもディムロスも、皆覚えてたもの。だから絶対にこの世界にいる。経過年数を確認した時は八年ちょっとだったから、たぶんどこかで寝てるんじゃないかしら。花火かロケットかミサイルランチャーかなんか一発ドカンと打ち上げて、景気よく起こしてあげなきゃ〜♪」 「ハ、ハロルド……お願いだからほどほどに、ね?」 沈んだ雰囲気が少しだけ浮上してくるものの、それは再びシャルティエの一言で突き落とされてしまう。 「でも、坊ちゃんは……」 「「「「………」」」」 お互いに気休めの言葉なんて意味はない。それが分かっているから、誰も、何も言い出せなかった。 「……ううん、オレは信じてる。レイスが絶対にジューダスも助けるって言ってたんだ。だから……!!」 「シェイドがそう言ったの?それじゃ大丈夫ね。伊達に世界の希望なんて言われたわけじゃないんだから、あの骨仮面連れてひょっこり帰って来るわよ」 「ふふっ……そうね!」 その時、黙り込んで何かを考え込んでいたロニが、突然立ち上がって歩き出す。 「ロニ?」 「いや、アレ(『トラベラー☆ラブリーウサ子三号機改良版その2ピンクバージョン』)に潰された時に何か見えた気がしてよ……色んな意味で衝撃デカかったから、今の今まで忘れてたぜ」 高く聳え立つ大樹の裏に回った辺りで、急に喋っていた声が途切れる。 何事かとカイル達が後に着いて行くと、 「……レイス、約束守ったんだ」 黒衣を見に纏った少年が、樹の幹にもたれかかって昏々と眠っていた。 [back][next] [戻る] |