『………』
「……シャル?」
『え?あ、はい。何ですか?』
「それはこっちのセリフだ。いつも騒々しいお前が静かだと不気味で仕方ない」

と、軽口をたたいた所で、リオンはふと自分自身の言動に妙な違和感を覚えて首を傾げた。

『……坊ちゃん。シェイドの家族って、どんな人達なんでしょうね』
「僕が知るか。ただ、アイツの人格形成の元になったんだろうから、それなりに疲れるヤツなんじゃないのか」
『そうですね……でも、きっと優しい人じゃないんでしょうか。シェイドみたいに』

優しさ。そう言われて思い出すのは、いつも他人ばかり気遣って自分の傷を隠そうとするアイツの姿。自分のために笑おうとしなかった、どこか悲しい姿。
ああ、そうだ。ちょうど桜舞う街で、馬鹿な事をほざいていた……。

“俺は、優しくないからな……”

どこまで自分に鈍感になればすむと言うんだろうか、ーーーーは……。

「………?」

一体今、何て続けようとした?
それよりも、誰を思い出そうとしていた?
まただ。この曖昧に形を成しきれない記憶と、それに伴って襲ってくる痛み。
何を忘れている?
何に怯えているんだ?

『あの、坊ちゃん?』
「……何だ」
『いつの間にシェイドとあんな風に喋るようになったんですか?何ていうか……らしくなかったですよね、さっきの』
「………」
『あ、いやその……いい方向に変わったなあって思ったんです。明るくなったっていうか、他人との壁が少し薄くなったっていうか』

そうだ。いつもなら馬鹿な発言をするシェイドに怒鳴りつけるだけだったのに、さっきは一緒になってふざけて。

“お前は変わった。そして、僕も変わった……お前に出会った事で”

何かが脳裏に浮かんできそうになったその時、無情にも形作りかけていた思考は、突然響いた扉を開く音に霧散してしまった。

「あらシェイド、どうしたのよそんなに慌てて?」
「街にモンスターが溢れかえってんだよ!手伝ってくれ!!」



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あきゅろす。
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