届かぬ手紙に覚える寂しさ1
「まぁ、自分の尻拭いは自分でしてこい。ついでにイレーヌに連絡よろしく」

決闘を受けてしまったというスタンを放り出し、心配だからとついて行ったフィリアと、闘技場という言葉に惹かれたマリーを除いた三人と二本が現時点で残ったワケで。

「ヒマね」
「ヒマだな」
「………」
「ノリ悪いぞ?お坊ちゃん」
「……斬るぞ?貴様」

一足先にやってきたイレーヌの屋敷で、何となく青春の余暇を謳歌していたりする。(嘘)

「それにしても、スタンだけじゃなくてアンタ達も仲良くなったもんよね」
「これのどこが?」
「馬鹿を言うな!」

え、何これ異口異音?全くもって合ってる気がしないんですけど。

「「………」」
『坊ちゃん……』
『はあ……そんなに退屈なら、貴方達も誰かに手紙でも書いたらどうなの。時間は潰せるでしょ』
「それもそうね。アタシもクレスタに手紙書こうっと。シェイド、さっきの便箋ちょうだい」
「どーぞ」

何故か他人の屋敷の玄関ホールにて再び手紙書き。ルーティは孤児院だとして、やっぱリオンはマリアン宛てか?

『ていうか、マトモな所で書いた試しありませんよね?』
「それは俺も同感だ。就寝前の宿屋にて、ベッドサイドの小机に小さく明かりをつけて時たま思い出に含み笑いしながらも、どこからか読み上げられるモノローグと共に細やかにしたためるのが一般的なんだろ?」
「一体どこのセオリーだそれは」
「むしろ俺自身が聞きたい。あー、そうだ。ちょっと二人とも書く前に話聞いてくれ」

うっかり注意事項話すの忘れてたぜ。便箋に向かっていた二人の視線を、ちょいちょいと手を振って集める。

「手紙の中に今回の旅の詳細は書くな。ましてや共犯者云々なんてのは絶対にやめろ」
「今更言われなくてもそれくらいはわかっている」
「何でよ?」

きょとんとするルーティに、小声で耳打ちする。特に言いたくはないけど、ここは敵になるかもしれないヤツの敷地内だしな。

「ここから手紙を出したら、二人の手紙は確実にダリルシェイドを通過するからだよ。そこで何かの事件でもあって検閲されてみろ」
「運が悪ければ、その共犯者とやらには筒抜けだな。国の中枢に近い人物となれば、そういった情報は余計に耳に入りやすい」
「あ、なーるほど。ってもしかしてシェイド、スタンの手紙をアンタが書いたのってそういう理由もあったの?」
「……そうなのか?」

そこはあまり深く語らず、肩を竦めてやり過ごす。
スタンの手紙は、あの信用できそうな大変弄り甲斐のあるド田舎出身金髪と〇がりコーンの幼馴染みの手渡しなんだからそう心配はしてなかったしな。(「そうは聞こえねーよッ!!」byバカッス)
第一リーネなんてマジで田舎だし、たとえそこから情報が漏れたって、たどり着く前に風化して消え去るか、俺達の旅が先に終わるだろ。(「何かリーネをバカにしてない!?」byスカタン)
それでももしもって時のために、迂闊な事を書かれないようこっちで完全管理したというのも多少はある。不用意にリリスちゃん達を巻き込んじまっても、果たしてリーネまで助けが間に合うかわかんないし。
……ま、大部分は面白そうだからで占められてるんだけど。(「うおいっ!?」byバカ&スカ)

「他人の脳内でまでツッコまねばならんとは……不憫な奴等だ」
『いきなり何の話ですか?』
「俺の脳内で某バカと某スカが漫才を繰り広げやがったからさ……」
「今すぐ病院にでも行った方がいいんじゃないのか。かなり重症のようだからな、主に頭の方が」
「ふーん、そういう事言うんだ。じゃあついでに坊ちゃんもそのヒネた性格矯正してもらいに行けば、整形外科とかで」
『え、普通に無理でしょう!?』
「貴様にだけは言われたくないな。鍼灸でコリと一緒に裏のある性格もほぐしてもらったらどうなんだ」
『坊ちゃん!?鍼とお灸の効能違いません?』
「「シャルうるさいっ!!」」
『え、ちょ、ぎゃーッ!?』

ユニゾンした怒鳴り声と同時に、鞘から抜かれたシャルが勢いよくどこかの壁へ吹っ飛んで突き刺さった。うん、ここが他人の邸宅であることには少しだけ目をつむることにしよう。

「あーもううるさーいっ!!ちょっとは静かにしなさいよっ!!」

と、壁に突き立っていたシャルが再びルーティの手によってどこかへ一直線に投げられ、見事玄関床のタイルの隙間に刺さったようだった。さすが姉弟。………あれ?何か違うな。

『何でまた……(沈)』



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