2 とまあ、猛ダッシュで走り去ったスタンに皆で手を振りつつ、事の成り行きを見守って……否、ただ傍観していたリオンを振り返る。 「てことで、ちょっくら時間潰していい?」 「今さら僕に聞くのか、お前は」 「事後承諾も立派な許可だ」 「……勝手にしろ」 というわけで、皆で噴水の近くに座り込んでいきなりながらふるさと小包……じゃなく、リリスちゃんへの赤紙徴兵令……でもなく。 「何、今の俺!実はかなりハイテンション?」 「いきなり騒がないでよ。ほら、誰が書くの?」 「フィリアでいいんじゃないか?私達の中では一番文字を書き慣れていそうだし」 「で、では、僣越ながら私が……」 「スタン、お前村を出てからも結構苦労してるんだな……」 マリーにはがい絞めされているバッカスが星に向かって何か呟いていたが、そこはまたもやサックリ無視らせてもらってだな。 「出だしはやっぱ、元気ですか?とかよね」 「常套句だな。でも後が続かない……」 「いっそ正直に全部書いてしまったらどうなんだ。下手に嘘を並べ立てるよりは、事実を述べた上でちゃんと生きている事を知らせた方が真実味もあるだろう」 「坊ちゃんナイス、それいただき」 「じゃあ……密航した飛行竜がモンスターに襲われて壊された脱出ポッドに乗り込んじゃって」 「雪山の湖に落ち、盗賊の一味と間違われて犯罪者扱い」 「ただ今妙な喋る剣にマスターとして選ばれちゃって、世界を危機から救う旅してる真っ最中です……みたいなカンジかしら?」 『スタンさん、妹さんに殺されるんじゃないかしら』 『奇遇じゃのうアトワイト。わしもこの旅が終わらん方がスタンのためな気がしてきたわい』 『この手紙が相手の方に届いた瞬間に、スタンさんの死期が決まりそうですね』 それは皆同意見だが、あえて何も言うまい。なぜってその方が面白そうだからさ。 「で、締めに、色々あったけど俺は元気にしてるから、心配しないでくれよ。ってカンジで」 「いや普通に無理だろ、心配しまくりだろ」 「あ、バカッスもそう思う?」 「だからバカッスって……もういいよ……」 リーネ出身の男どもはなかなかに弄り甲斐があるなと思いつつ、完成した手紙を見て何か物足りなさを感じていたりする俺。 「うーん、何かこう物足りない気が……………よし、ここは文体変えちまおう。やっぱ手紙はインパクト第一って言うだろ」 「え、あの、私は初耳なんですが……?」 「コイツの話は八割削って聞くのが丁度いいくらいだろう」 『八割ってほとんどなくなるわよ』 「よーし、今度こそ完成!」 外野で何かゴチャゴチャ話してる間に、ようやく清書した手紙が完成。ちゃっちゃと封をして、バッカスに押し付ける。 「あ、ちょっと!完成したの見せなさいよ」 「後でスタンにもちゃんと話すつもりだったし、そん時のお楽しみってことで。あー、ちょっと待てバカッス!」 何か会った時よりいくぶん疲れて見えるバッカスの後ろ姿に気付いて、一方的にガバッと肩を組んだ。 「だからバカッスじゃねぇって言ってんだろーがっ!!つか何なんだよ、もう用件は終わったんだろ?」 「ちょっくら親睦深めようとか思ってるだけじゃん。スタンの友達イコール俺の下僕は世界の常識だぞ」 「何か違うだろソレッ!?」 [back][next] [戻る] |