策は二重、三重に1
時期的にも、満開の桜が咲き誇るノイシュタットの町並み。遠目からでもやっぱり綺麗で、もうオレにとっては何度目かの光景だけど新鮮で。

「ここが、ノイシュタットですか。美しい街ですね」

初めて来るフィリアなんかは、桜の木々やできて間もないだろう新しい町並みに目を輝かせている。

「そうそう。んで、スタンの故郷のリーネって村がこの大陸の北端に辛うじて位置してる、馴染みがあるともないともいいきれない街」
「シェイド、そんな微妙な説明……」
「いーじゃん。俺は間違った事はいってない。ただリーネはひたすら田舎だと……」
「確かにな。そこのバカがいきなり飛び出しちまうくらいには田舎だよ」

と、突然あらぬ方向から聞き慣れない声の相づちが入ってきた。

「バッカス!?」
「よう、スタン!飛び出したっきり連絡もよこさねぇから、どっかでくたばってんのかと思ったぜ」

なかなか軽そうなノリの同年代な男が近付いてきて、スタンの頭を軽く小突く。

「待てーっ!!スタンの頭に妙に刺激を与えたら、使えない頭が余計に使えなくなるから!!」
「おお、それもそうだな」
「バッカスっ!?」

なかなか楽しい奴じゃないか。ハロルドやジョニーの次くらいにノリがいいな。

「あの、スタンさん。こちらの方は……?」
「あ、ゴメン。こいつはバッカスっていって、リーネでの俺の幼馴染みなんだ」
「アンタら、スタンの仲間か?こりゃまた大勢いるな……しかも女の子が四に、ふがっ!?」

何故か勢い良く皆に拉致られ、建物の影で懸命に何か説明されている姿は、まぁギリギリ未遂として見逃してやろう。いつかバッチリのし付けて何か返してやりたい気分だが。

「……あー、でだ。お前一回くらいリリスちゃん達に手紙書いてやれよ。すっげぇ心配してんだぞ?」

話の切り出しがかなり突然なのはスルーしてだな。
バッカスのセリフに、スタンは手紙か……と空を仰いだ。

「でも、手紙なんて書いた事ないから、何書いたらいいのか……」
「何でもいいじゃない。元気にしてるとか、何があったとか、近況とかを一筆書けば。それだけでも家族は安心するもんよ?」
「スタンの近況なんか知らせたら、余計に心配しないか?」
「あー……」
「り、リリスに殺される……」

半眼であらぬ方向を見つめるルーティに、頭を抱えて蹲るスタン。うん、二人の気持ちはかなりよくわかる。

「ですが、やはり元気にしている事は伝えておいた方がよろしいんじゃないでしょうか」

フィリアのその一言に、ますますうーんと唸ってしまう。

「あー、ま、とりあえず俺はこの辺で……」

と、バッカスが手を振りながら去ろうとしたのが視界に入って。

「マリー、そこのバカッス捕獲っ!!」
「ラジャッ♪」
「ええっ!?ちょ、何でっ!しかもさり気なく変な呼び方すんじゃねぇっ!!」
「なーにを。スカタンにバカッスなんて最強のコンビじゃないか。キミをバカッスと呼ばずに何と呼ぶ!」

しかもスカタンの息子はバカイルだぞ?何とトリオが組めるじゃないか、喜べ。(無理だろ)

「普通に呼べよ、普通に!!つーか何でいきなり捕まんなくちゃなんねーんだよ!!」
「いや、今すぐ手紙書いて、バカッス君に届けてもらおっかなと思ってさ」

少しばかり驚きの色を見せる一同。
ちなみに、バカッス言うなー!という叫びは軽くスルーの方向で。

「あら、でもいいかもね。コイツの事だから、いつか手紙だそう、なんて調子じゃこの旅終わっちゃいそうだもの」
「そういうコト。じゃ、スタンはちょっくらアイスキャンデーでも買ってきてくんない?」
「何で俺が!?手紙は!?」
「そんなの俺らがバッチリ書いとくって。グフフッ☆この私にまっかせなさーい!」

某天才様のハイテンションをちょっくらお借りしてみた。

『ス、スタン!今はとにかくこの場から逃げろ!!』
「ディ、ディムロス!?」
『おおおお願いしますから今はシェイドに逆らわないで下さい!!果てしなく嫌な予感がするんですよ!!』
「な、何なんだよチクショーっ!!」



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あきゅろす。
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