2 いつの間にか堅い空気がとけて、いつも通りな雰囲気に戻ってる事に今更ながら気付いた。 いやぁ、やっぱ俺達はこうでなきゃな。 『でも、シェイドはどうして共犯者なんて考えに至ったんですか?ずっとダリルシェイドにいた僕と坊ちゃんも気付けなかったのに』 スコーンッ!! 「「「「………」」」」 『『『………』』』 「ん、リオン、いつの間にかシャルティエが壁に刺さっているぞ?」 『(いえ刺さってるっていうかその表現も確かに正しいんですけど実際僕今見事に壁に刺さっちゃってますしむしろこの場合何で脈絡なくシェイドに力の限り暴投されたのかが疑問点なワケで)』 「気にすんなよマリー。シャルティエだって突然壁に刺さりたくなることもあるさ」 『え、今のって僕の意思から遠く離れた所で起こった現象ですよね!?』 「そうか。シャルティエもそんなお年頃か♪」 『だから違いますって!!それってどんなお年頃……というか、どれだけ必死に訴えてもマリーには聞こえてないんですよね……』 暗雲背負ったシャルを励ましながらも深々と突き刺さった壁から抜き取ろうとしているリオンを横目に、俺も一つ大きく溜め息。 「シェイドさん、お疲れですか?」 「コイツより周りの方が圧倒的に疲れてると思うから、気にする事ないわよフィリア」 「酷いなルーティ。ま、確かに俺は元気だけどさ」 心配げなフィリアに向かって、肩を竦めながらも苦笑する。 『だがシェイドや、本当に疲れとるんなら今の内に休んどった方がいいぞ。これから先まともに休憩がとれるという保証はないんじゃからな』 「いや、本当マジで疲れてないんだって。ただ……俺が船に乗る時って、大抵なんか問題抱えてたりトラブル起こったりするパターンが多いなと思って」 最初はアレだ。前の世界でのノイシュタット行きの船の中でスタン達と人道的問題について論じ合った結果気まずくなって。 バティスタ率いるレンズ海賊団捕まえに海に出たら砲撃受けて、穴開いた船底を凍らせたら体力限界でぶっ倒れるし。 その次は、俺が本当の名前呼ばないからって坊ちゃんが拗ねて喧嘩になって。 ファンダリア行きの船ではティべリウスのセインガルド侵攻宣言でテンション下がりまくっただろ。 ちょっと飛んで十八年後のノイシュタット行きの船じゃあヌシとかいうのに襲われてやっぱり船底に穴開いて、ワケが分からん内に俺がぶっ倒れてて。 ノイシュタットからファンダリアに向かう途中でうっかりキレてロニに鉄拳制裁下して。 「……というか、半分近くは俺が原因か」 「馬鹿みたいに長く過去を振り返ってたわね、アンタ」 「馬鹿言うな。とある田舎者じゃあるまいし」 「何さりげなく俺を話題に引きずり込もうとしてるんだよ!?」 えー、だってシャルがどうも再起不能っぽいし? 「そんなに不運が続くようでしたら、いっそお守りでもお持ちになった方がいいかもしれませんね」 「お守り?うーん……この場合何になるんだろ。家内安全?無病息災?交通安全に学業成就、商売繁盛で……」 「笹持って来い♪」 「違うからっ!!マリーもノッてどうすんのよ!」 え〇っさんを知っているとは……通だな!(違) 「あ、アレは?センキャクバンライとかいうの!」 「千客万来の意味を知ってから発言しろよこのスカタンが。しかも俺に招き猫を持ち歩けと?」 「じゃあいっそ一攫千金でよくない?」 『それはあなたの願望でしょ』 「安産とかはどうだ?」 「いやいやマリーさん。それ、俺に一番関係ないから」 [back][next] [戻る] |