影でうごめく共犯者1
ただ今俺は、とあるノイシュタット行きの船の一室で、皆に見下ろされるように囲まれて一人大人しく座ってます。
完全包囲?むしろある意味、四面楚歌な状況?

「シェイド、何で正座なんだ?」
「聞いてくれるなスタン。何となく、自主的にだ」

だってさ、むちゃくちゃオーラが怖いんだって。主にリオンの。

「さて、約束通り海に出た。洗いざらい吐いてもらおうか」

海に出るたびに問題を抱えてる頻度が高いと思うのは気のせいか?俺は海に嫌われてるのか?
今回は、まさかバルックのいる前で計画云々の話をするわけにもいかないから必死に頼みまくって、こうして船上で説明するという権利を勝ち取ったワケだし。

「あー、あの、な……?」

こうなりゃ腹括るしかないか。

「俺は元々、今回の騒動がグレバムを中心にして起こったもんじゃないと思ってたんだ。だって考えてもみろよ。いくら学識があって優秀だろうと、たかだか一介の大司祭ごときが簡単にあのレンズの力を使いこなせると思うか?」
「確かに、そうかもしれません。いくらグレバムがそちらの方面に詳しくても、神の眼に関する文献はごく一握りだったようですから。ましてや、あんな巨大なエネルギーを意のままに操るなんて……」
「だからな、グレバムには共犯者がいたと思うんだ。もっと言えば、黒幕」

一斉に驚愕の視線が集まる。そりゃ、皆からしたら考えてもみなかったことだよな。

「もしかして……バティスタ!?」
「誰よバティスタって?」
「グレバムの側近だった司祭です。私にとっても先輩に当たるのですが……」

言葉を切って、一人物思いにふけってしまうフィリア。俺自身も、アイツには色々と思うところがあるから、フィリアの気持ちはよくわかる。

『だが、今までのシェイドの話を聞く限り、その共犯者というのは神殿の者ではないように思うのだが』
「ディムロス正解。共犯者は、神殿の関係者でも、ましてやグレバムよりも地位の低い人間ってのは有り得ない。だから、」
『神殿の外の人間で、尚且つ神の眼を操る術を知っている何者か、というわけね』

皆さん理解が早くて助かるね。

「だが、それと僕に一体何の関係がある?」

唐突に、一番答えたくなくて後回しにしてた答えを求められる。俺は、不自然に見えないよう、あくまでもいつも通りに振る舞うよう心掛けた。

「俺はその共犯者が、セインガルドに……いや、ダリルシェイドにいると踏んでる」
『え、それじゃあもしかして……』
「国の中枢の最も近い所に……お前のすぐ側にいるんだよ」
「ど、どういう事だよ、シェイド!?」
「ソーディアン・シャルティエを持った少年が、国王配下の客員剣士リオン・マグナスだってのは周知の事実だ。グレバムはリオンを見た瞬間に、例の共犯者に裏切られたと思った。だからこそのあのセリフだったんじゃないか?手を組んでいるはずの仲間に、追っ手を差し向けられたって」

お前が追って来るとは……。
つまり、グレバムにとってリオンは想定外の事態だったわけで。

「お前の話が真実だったとして……誰なんだ、その共犯者というのは。そこまで言い切れるのなら、もう黒幕の目星は付いてるんじゃないのか?」
「……今は言えない。確かに睨みを付けてる奴はいるけど、証拠が一つもない。このままじゃ、とち狂った末の妄想で片付けられるのがオチだ」

たとえ証拠があったとしても、今この状況で俺がヒューゴの名を口にできるとは思えなかった。
何せ、今の俺には確実に信用してくれる味方が圧倒的に少な過ぎる。未来がどう転ぶか予測できない今、どんな事態にも対処できるように足場はなるべく固めておきたいのが本音だ。
信じてもらえるかわからない情報で、辛うじて繋がっているような状態の皆との関係を崩したくない。

「だからこの旅の目的である神の眼奪還と飛行竜の捜索に、グレバムの身柄の確保ってのを付け加えてほしい。絶対に生け捕りという条件で」
「そっか、共犯者っていうなら、グレバムにソイツの名前を吐かせれば確実な証拠になるものね」
「そうそう。いざとなれば口か利き手さえ動かせりゃ後は……なあ?」
「五体不満足でも特に問題はないな♪」
「え、え?い、いいのかそれって……?」
「いいわけないでしょうがスカタンっ!……これはもしかしたら、アタシ達でマリーとシェイドからグレバムの身を守る必要がありそうね」
『若いもんは過激じゃのぉ』



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あきゅろす。
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