「でもさ、俺ちゃんと事前に言ったぞ。リオンがやりたいようにすればいいって」

だから俺たちを助ける選択をしたのも、リオン自身が決めた事だ。ちょっとだけ声を大きめにして主張してみたら。

ぶぅんっ!……ガッ!!

「うおわっ!?」
『坊ちゃんっ!?』

確実に頭を狙って投げられたと思われるシャルが、耳の横スレスレに突き刺さりました。

「いいかスタン、この次は今回のように安々とグレバムを逃がしはしない。僕達の実力を見せつけてやるぞ!」

照れ隠しもあるのか、それでもリオンがスタンと共に戦う意思を伺わせたセリフ。きっと、ギリギリまで譲歩してアレなんだろうなと思うと……やばい、笑える。

ヒュッ……カッ!!

再び投げ付けられた短剣は、シャルとは反対側の耳横に見事に突き刺さり。

「……あの、リオンさん?」
「腹が立つからほくそ笑むな」
「じゃあ、豪快に声上げて笑えばいい?」
「……………スタン、グレバムの次はアレを討ち取るぞ。全力で」
「え、ええっ!?」

リオンを何とかなだめようとしているスタンを、込み上げてくる笑いを堪えながら見ていると、両脇に突き刺さっているシャルと短剣を抜いてくれる影が。

「どうも君はリオンを怒らせる才能に長けているようだな」
「最高の賛辞として受け取っとくよ。そういや、神殿のモンスター退治ありがとな。これに関してだけは礼を言っとく」
「君も手伝ってくれるともっと楽だったんだが。……そっちの武器もなかなか威力があるようだし」

今だ手に持ったままだった銃を指差されて、俺は思わず自嘲するような笑みを浮かべてしまった。

「便利だし飛び道具だし多少は威力もあるけど……あんまりいい気分じゃないな、コレを使うのは」

飛び道具という点では弓矢も似たようなモンだけど、拳銃はまた違った意味で殺した感覚が残らなくて嫌いだ。
自分は手を汚さず、相手を殺したり支配したりする間接的なこの鉄の塊は。

「……まるで俺と同じだ……」

あの時廃棄されずに天上側に残っていたら、俺もベルクラントと同じように、地上の人間を支配し、殺すだけの兵器に成り果てていたんだろう。

「……君は、」
「そういえばグレバムの奴、リオンの姿見た途端に様子が変わったわよね?お前が追って来るとは、とか言ってたし」

何か言いかけたバルックと被るように、いつの間にかすぐそばに立ってたルーティが怪訝な顔をして考え込んでいた。

「確かにそうですわね……でも、どちらかといえばリオンさんの持つソーディアンに反応していたというか」
「神の眼は自分の手にあるんだから、恐れるものなんてない、とも言っていたな」

続くフィリアやマリーの報告に、どこか妙なひっかかりを覚えた。
リオンが追って来た事を知って様子が変わった。恐れるものはないって発言からは、単独で何かやらかすカンジがする。そういやヒューゴはどこからどこまでを想定してたんだ?まさか、最初から最後まで全部アイツの計画、なんてことは。

「リオン」
「……何だ」

バルックからシャルを受け取りながらも怪訝な表情で振り向くリオン。だけど、そんなのには構ってられなかった。

「さっきお前が焦ってたのってまさか、計画に支障が出たからなのか?グレバムはお前が追って来たのを見て、反逆したんじゃ、ない……んだよ……、な……?」

ものすごく皆の視線集めちゃったようです。これはもしかしてもしかしなくとも、

「……シェイド、その話後でゆっくり聞かせてもらおうか?」
「………(汗)」

俺って墓穴掘っちゃった?



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