「やっぱり戻ってきたな、坊ちゃん」
「……うるさい」
「シェイドさん、リオンさんがお戻りになると気付いてらっしゃったんですか?」
「もう、それならそうと早く言ってよね!」
「悪いって。確信はなかった。コイツが俺たちを切り捨てるかは半々ってトコだったし」

そこで一旦切って、リオンを探るような目付きで見据える。

「なあ、一体何をあんなに焦ってたんだ。スタンの事以外で何か気にかかる事でもあったのか?」
「………!」

俺だって伊達に親友やってなかったからな。たとえ一緒に過ごした時間が綺麗さっぱりなくなろうと、様子がおかしい事にくらいなら気付ける。

「……別に。何も問題はない」
「あからさまに挙動不審な上に、間を置いてまで嘘つくか?」
「だとしてもお前には関係ないだろう。他人の事に首を突っ込むな」
「今現在パーティ組んでるメンバーなんだから、関係なくはない。後からとばっちり来ても面倒だ、解決できそうな時間と余裕と心の準備がある今の内にとっとと吐け」
「しつこいぞ貴様……いい加減にしろっ!」
「しつこい男は嫌われるんだぞ!」
「僕は主にお前に言ってるんだ!!」
「ついでに言うとここの神殿の実態はお笑い養成スクールだったんだ……!」
「まあ、そうだったんですか!?」
「しかも神官さんの一人は息子が家出したまま帰って来ないんだーーーっ!!」
『っていうか何の話ですか!?』

どこか遠くから「暴露するなーっ!!」という叫びが聞こえて来た気もするが、スルースルー。

「……というか君達、スタン君をどこか休ませられる所へ連れて行ってはどうだ?」
「おお、バルックさん!その存在をわざとうっかり忘れてたぜ」
「……シェイド君、もしかしなくても君、俺が嫌いだろう」

爽やか笑顔の背景にはお互いに吹きすさぶブリザード。別にさ、バルックさんの事嫌いじゃないんだよ。ただ生理的に受け付けないだけであって。(尚悪い)

「シェイド、バルックの言う通りスタンを宿に連れて行った方がいいんじゃないか?」
「それもそうだな。リオン、さっきの件はまぁ一時休戦ってコトで脇に置いといて、スタン運ぶの手伝え」
「シェイドなら一人でも大丈夫なんじゃない?見掛けによらず力はあるんだし」

それはそうなんだけどさ。

「完全に意識ないから肩貸して歩かせらんないし、まだ石化の余韻が残ってるだろうから担いだら変に身体曲がって痛いだろうし、背負うにしろ誰かに手伝ってもらわなきゃなんないだろ。それとも……俺がスタンを横抱きするという見苦しい光景が見たいと?」

間。

「……わかった、手伝う」
「ゴメン、言ったアタシが悪かったわ」
「素直な反応ありがとう。俺だって勘弁してほしいからな」

担ぐ、背負うならまだしも、何が悲しくて同世代の背丈もあんまり変わんない男を横抱きする必要があるのか。よほどのことでもない限り勘弁願いたい。

「……、ぅ……」

神殿を出て、薄らぼんやりと明るくなって来た東の空が見えてた時、抱えていたスタンが小さく身動いだ

「目が覚めたか」
「スタンさん?」
『スタン、しっかりしろ』

とりあえず手近な柱に背をあずけるように座らせると、うっすらと瞼を上げたスタンがキョロキョロと辺りを見回していた。

「あれ、ここは……?」
『スタンさん、身体痛いところはない?普通に動かせる?』

状況がよく判っていないながらも、アトワイトの言葉に素直に従って腕を回したりしながらも立ち上がる。

「大丈夫、だな!」

いつも通りなその様子に、俺達はいつの間にか詰めていた息をホッと吐き出した。

「そうだ、グレバムは!?」
「残念ながら。モンスター差し向けるだけ差し向けてトンズラしやがった」
「そっか……ゴメン、迷惑かけちゃって」
「別にアンタが謝る事ないでしょ?むしろ、いてもいなくてもあんまり変わんなかったわよ」
「る、ルーティ……」
『あなたも素直じゃないわね』
「そうだぞスタン!お前は仲間を守ったんだから、ちっとも迷惑なんかじゃないんだ」

さらっと言ってのけたマリーのセリフに、皆の意識が意図せずリオンの方へと向いてしまう。
気まずいな……とか思ってたちょうどその時、

「スタン君、具合は大丈夫かね」
「ナイスタイミングだなオールバック!アンタこそ、周りの空気を読まずにズカズカ入って行けるデリカシーナッシングマンだ!」
「はっはっは。一向に褒められている気がしないのは何故だろうな?」

そりゃそうさ、一言たりとも褒めてないんだから。

「バルックさん、どうしてここへ!?」

というわけで、状況に着いて行けない田舎者のために一点集中講座もといスタンが気を失ってからの経緯を話し始める事に。

「……それで、リオンさんがバルックさんに、神殿へ向かうように頼んでくれたそうなんです」
「そうだったのか……リオン、ありがとう。皆を助けてくれて」
「……ふん、だから言っただろう。お前達は足手まといだと。本当ならバルックに協力させて、グレバムを捕らえられたはずなんだ。お陰で一からやり直しだ。まったく、下らん……」

という二人の会話を横目に、他のメンツはちょっと離れて秘密会議中。

「それにしても腹の立つ言い方するわよね。アタシだったらぶん殴ってとっととおさらばしてやるわ」
『その前にティアラがある事を忘れないようにね、ルーティ』
「あの二人を足して二で割ったら丁度良いと思うのだが……」
「それができたら君達も苦労はしてないだろうな」
「バ、バルックさん、いつの間にこちらに?」
「勝手に若者の話に入って来んなオッサン」
『シェイド、本当に嫌っとるのぉ……』

とまぁ、その辺は置いといてだな。俺自身ツイストしすぎな坊ちゃんの性格にもそろそろ焦れったくなって来てたんで。



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あきゅろす。
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