夜明けの街で1
前にアイツに言った言葉を、同じで違うアイツにもう一度言ってみた。
やりたいようにすればいい、信じてやるから、って。
でも、あの時とは決定的に違う言葉の意味。
飛行竜で伝えた時は、どうせ変わらない、変えられない、変えるつもりもない未来なのだからと、半ば諦めを込めてのものだった。
定められた運命から逃れる事はできないのだから、と。







「だー、もう!さっきから全然減らねえな!」
「それどころか増えてるわよッ!……『アイスニードル』!」

リオンが去った後くらいから、神殿内を徘徊してたらしいモンスターまでこの隠し部屋に押し寄せてきたようで、今の俺達はバジリスク達との板挟み状態。
ぶっちゃけ、再び意識を失ったスタンを守りながらの戦いは厳しいものがあった。

「ちょっとシェイド!何でアンタ、リオンを止めなかったの!?」

戦いながらも罵声を飛ばしてくるルーティにまだまだ体力的には余裕かと思ったが、声とは裏腹にその表情はなかなかキツそうだ。

「だってグレバム逃がしたらマズいじゃん。それに……」
「だからって、自分を庇ったスタンを見捨てるっていうの!?そんなの……っ!」

いやいや、怒りたくなる気持ちもわかるけど、人の話は最後まで聞けって。と、苦笑しながらもそう言いかけた時、

「……ルーティ、後ろだ!」
「ッ!?」

神殿の方から降りて来ていたゴーレムの巨大な腕が、疲れや怒りなどで焦っていたルーティのスキをついて振り下ろされる。
銃弾なんかじゃ効かないと、とっさに剣を構えて庇うように斬りかかろうとした。

「『エアプレッシャー』!!」

直前、晶術による重力変化に気付き、反射的に後ろへと跳ぶ。見えない重みに潰された目の前のゴーレムは、見る間にレンズへとその姿を変えていた。

「アンタ……!?」

くずおれたゴーレムの向こうに見えたのは、やっぱりどこか偉そうに踏ん反り返ったリオンがソーディアンを構えている姿。

「戦闘中に油断するなこのバカ女が!どうせまた金探しでもしていたんだろう」
「な、違うわよッ!!ホントにムカつくガキね!誰のせいでこんな事になったと……」
「まあまあ、落ち着けルーティ。どーどー」
『シェイド、そんな牛や馬じゃないんだから』

一人増えただけでかなり戦闘は楽になった。口論しながらも攻撃の手を休めず戦っていけば、モンスターはあっという間にその数を半分にまで減らした。しかも、加勢してくれたのはリオンだけでなく、

「大丈夫か、君達!!」
「え、バルックさん!?」
「チェリクを出たと聞いて、少し心配だったから追って来たのだ。そうしたら、街の入り口でリオンに会ってな」

バルック率いる十数名の傭兵部隊によって、戦況はますます優勢に。あれだけ蠢いていたモンスターも、十数分で片付いた。

「や、やっと終わりましたね」
「もう、有り得ないわ……」

戦い続けの疲労からか、ぐったりと座り込んだルーティとフィリア。そんな二人を介抱するマリーを横目に、俺はニヤリと笑みを浮かべた。



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