その時、

「こうなったら好きにやらせてもらう。まずは貴様達全員、血祭りだ!」

少し年季の入った男の声と、それに重なるようにして聞こえてきたモンスターの低い唸り声。
駆け続ける足をますます速く動かして、地下の広間へと足を踏み入れた瞬間、

「何だ、貴様はッ!!」
「追いついたぜ、グレバム」
「シェイド!!」

まさに今、逃亡しようとしてましたってカンジのオッサンと鉢合わせた。その向こうには、数十匹のモンスターと対峙するスタン達の姿が。

「結構あっけなかったが、年貢の納め時ってヤツだな。神の眼はどこにある」
「ハハッ!もう神殿の外だ。モンスターを自在に操れるというのもなかなか便利でな……」

クソッ!モンスターに運ばせてるのか……。
と、スキを見て逃亡を謀ろうとしたグレバムに、俺は右手に持ったままだった拳銃を構え、ぶっ放す。

パァンッ!!

「………!?」

放たれた銃弾は、ヤツの足の横ギリギリを掠めていった。今までに見た事もない型の武器を目にしたせいか、グレバムのその表情には少しばかりの動揺が見て取れる。

「次は当てる。とっとと投降してもらおうか」

状況は、あきらかにこちらが有利。スタン達の方が手が放せなくても、神の眼が近くにないグレバムとサシなら、確実に勝てる自信があった。

「………?」

なのに、絶対的な敗北を前にしての、グレバムの奇妙に勝ち誇ったような笑みを見て、一瞬、妙な違和感を覚えた。

「危ない、リオンッ!!」
「!?」

グレバムの肩越しに見えた光景は、バジリスクの攻撃の軌道上にいたリオンを、必死の形相で突き飛ばしたスタンの姿。

「……クソッ!!」

とっさに、構えていた拳銃の射撃目標をバジリスクへと変えて引き金を引く。だが、その弾がモンスターに届くのは一瞬遅く、

「っ、スタン……!!」

駆け寄るルーティが、倒れ込むその身体を何とか支えようとするものの、全身を石と化すバジリスクの攻撃のせいで、重みに耐えきれずに床にくずおれる二人。
とっさに、銃口からそらしていたグレバムの方へと向き直るが、俺の一瞬のスキをついて脇をすり抜けて駆け出して行くのが目に入った。

「……っ、テメェ……!!」
「スタン!!」

後を追おうと一歩足を踏み出した時、悲鳴のようなルーティの叫び声が耳に届き、俺は、ぐっと拳を握り締めてその場に止まった。
そして、今だに群れを成して襲ってくるバジリスクと戦う皆の元へと足を向けた。



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あきゅろす。
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