ライト級揃い1
「ここがカルビオラ?やっと着いたのね。あっつ〜……」

朝日が昇るのとほぼ同時にチェリクの宿を出て、何とか太陽が真上にさしかかる前に到着した首都カルビオラ。

「いいじゃん暑いのも。大陸丸々って規模のデカいサウナだと思えば、ダイエットにも効果的な気がするだろ」
「はっ、ダイエット……そういえば最近船に乗る機会が多かったから運動不足でヤバかったのよね……」
「ルーティさん、そんなにお気になさるほどじゃ……」
「だってアタシより背高いのにフィリアの方が体重軽いのよ!?」

そりゃ仕方ないって。フィリアはルーティと違って完全インドア派で、筋肉自体少ないんだし。
……ん?何か俺の方睨んでませんかね、ルーティさん。

「アンタも細すぎなのよシェイドーッ!!」
「ぐえっ!?ちょっ、しがみつくなルーティ!!」

いきなりの容赦ないタックル&ウエストへのしがみつき。

「細っ!っていうか薄っ!!」
「薄い言うな、気にしてんだから!……ってかマジで離れろルーティ。マリーがすごくマネしたがってて怖いから」

ものすごく楽しそうに手をワキワキさせながら接近してくる相手に、思わず後退りしたくなる俺の心境も察してくれ。

「もしかしたらシェイド、マリーよりも軽いんじゃないの?」
『粘るわね、ルーティ……』
「ちゃんと比べてみたことはないが、たぶん私と同じくらいじゃないのか?」
「背も高くて、細身なのに力があって……シェイドさんが羨ましいですわ」

いや、まあそれにだって色々と事情があるわけで。

『やっぱり女の子は胸がある分多少は重くもなるんじゃろうて』

間。

「「あ、………」」
『老……』
「俺、知ーらねっ」

とばっちりを避けるために、フィリアから預かってたクレメンテを、ボケラッとしているスタンに手渡す。

「え?シェイド…、」
「うるっさいわねっ!じゃあ胸もなくて重いアタシはどうなるのよこのエロソードッ!!」
「ちょ、ルーティ、待ってーッ!?」

クレメンテを手放せばいいものを、パニクってるスタンはとりあえず背後に阿修羅を背負って追いかけてくるルーティからひたすら逃げて逃げて逃げまくっていたり。

「全く騒々しい……アイツらバカか?」
「いいじゃん。バカやれるのも心のゆとりがあるからこそだろ」

あえてバカは否定しないさ。どっからどう見てもただのバカだし。(酷)

「それにしても、神殿に近付くにつれ人が減っていくな」

遠くからでも見えるデカいストレイライズ神殿に向かって歩いて行くと、ふいにマリーが呟く。

「敬ってる気配はカケラもないようだな……」
「あの、私、アイルツ司教様に聞いた事があります。カルバレイスは独自の信仰が根強くて、布教に苦労しているのだとか」
「独自の信仰?一体どのようなものなのだ」
「自分達を神の末裔と位置付け、祖先である天上神を崇める、というものです。平たく言ってしまえば、シェイドさんが前におっしゃったのと同じ事ですわ。かつて自分達がいた神の世界に戻る事を至上の目的にしているとか」

馬鹿馬鹿しい。それで天上人として復興の狼煙を上げた暁には、今まで自分達を虐げてきた地上の民に仕返しでもするつもりか?
天地戦争の再現でもしたいのかね。

「くだらねー」
『そういえば、シェイドって無宗教っぽいですよね。すっごく現実主義者ですし』

まあ、確かにそうなんだけど。

「神、っぽいのを信じてないわけじゃない」
「シェイドもアタモニ信者だったのか?」
「意外、というか不気味だな」
「素晴らしいですわシェイドさん!これからは、共に神への祈りを捧げ、多くの人々への布教に務めてまいりましょう!!」

三者三様の反応ありがとうございます。じゃなくて。

「違うって、俺はアタモニ信者じゃねーよ。ある意味、独自信仰みたいな」
「どのようなものか、お聞きしても?」
「うーん、何て言うか」

適当にはぐらかそうか、とか思ってたんだけど、案外フィリアもマリーも興味津々ってカンジで。しかもリオンも興味ないフリしながらもちゃっかり聞く気はあるみたいだし。

「……この世界は、既に定められた一つの運命を全く違える事なく歩み続けてるんだ。誰一人として変える事も、逃れる事もできずに。でもこの世界には……何て言うかな……一つの意思?っぽいのがあって、そいつがどうにかこうにか頑張って、抗えないはずの運命を刻み続ける歴史という穏やかな水面に、小さな一つの雫を落とした」

それが、天地戦争時代に生み出された俺という存在。
今までフォルトゥナとかエルレインから聞いた話を自分なりにまとめてみると、こういうえらく壮大な事になっちまってたんだよな。

「一種の哲学か、神話のようですね」
「まあな。だから俺が信じてる、って言っていいのかは微妙だけど、世界には万物を創造したくせに干渉しきれない役立たずな意思ってのがあると思ってる」
『瑞部と罰当たりな信じ方ですね』
「役立たず発言を否定できるなら、今すぐ俺に天誅下してみろっつーの。ケッ!」
「わざわざ挑発してどうするんだ」



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