「そんなものをどうするんだ?」

弾倉を覗いたりしてハンドガンの状態を確かめていると、見るからに怪訝そうなバルックが話しかけてくる。

「コレ、マイナー(どころじゃない)だけど飛び道具なんだよ。ジャンクランドの方で拾ったって言うからにはたぶん天地戦争時代のものなんだろうけど……」

当たり前だけど弾は空。でも、適当に火薬とか薬品とかで作ったら何とかなりそうだな。そういや、フィリアがボムの合成に色々使ってるみたいだからアレ借りて……よし、天地戦争時代に年中貧乏な地上軍で培った倹約的再利用・再生利用精神で意地でも銃弾作ってやろうじゃねぇか。

「君は本当に詳しいんだな。伝説とされるかの時代について……」
「人よりかは幾分、ってとこだけど。しかも勝者側の視点でしか物事見てないカルバレイス人には悪いけど、俺は反天上人派だし」

はっきり言えば、今俺はバルックを怒らせていると言っても過言じゃない。しかも、煮え切らないこのムシャクシャした想いを、目の前のアイツらの子孫である人物に八つ当たっているだけ。

「シェイド君、君は……」
「じゃあ、失礼します。案内ありがとうございました」

これ以上話してられなくて、無理やりだけど会話を終わらせて踵を返した。手に握ったままの鉄の塊が、異様に冷たくて触れている場所からどんどん熱が奪われていく気がする。
何にこんなにもムカつくかって、やっぱり……。

「あ、シェイド探したぞ!何も言わずに外に行っちゃったから心配しただろ?」

薄暗くなっても無駄に目立つ金髪が、家々から漏れる明かりに照らされてきらめいていた。

「……スタン…」
「??……どうした…、」
「今すぐ一発殴らせろ」
「『!!?』」

ドガッ!!パラパラ……

「避けんなよスカタンっ!!」
「いや避けるって普通っ!!」
『というか、壁……他国で建造物を破壊するな。危なすぎる上に器物破損だろうが(汗)』
「中に人の気配がないのも、ここしばらく誰かが出入りしてない空き家である事も既に確認済みだ」
『(いつの間に……)』
「しかも現状、セインガルド王の勅命で動いてんだから、俺の行動はその名の元に許される。後の責任は全て陛下行きだ。万事解決、と」
『いや、待て』
「そ、それより何で俺がいきなり殴られなきゃなんないんだよ!?」
「過去の諸々を精算したつもりで、全然未練タラタラな自分にもんのすごいムカついた」
「って、俺関係なくない?」

あー、関係ないんだけど。

「いくらムカつくからって自分で自分殴ったらただの意味不明なイタい奴じゃん。だから……身代わり?」

ニッコリとした笑みと共に、さっき避けられた拳を再び握り締める。

『………スタン、今すぐ逃げる事を勧めよう。こんな所でマスターを失うわけにはいかんからな』
「安心しろディムロス。予備のマスターならここにいる」
『………いっそシェイドの方がいいかもな(ボソリ)』
「ディムロスっ!?」





とまぁ、俺達が夜のチェリクを駆け回っている間に、宿ではリオン達が神の眼の情報を手に入れてたらしくて、翌朝早くにカルビオラへ向けて出発することが、俺達の同意ナシに決定事項として後から伝えられた。




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