「久しぶりだな、バルック」
「おおリオン、よく来てくれた……」

案外あっさりと見つかったバルックのオフィス。
外とは違ってひんやりと冷やされたその空間に入ってすぐ、俺はあるものに目を囚われた。

「………?」

ちょうどソーディアンのコアレンズや、リアラとエルレインが持ってたペンダントや……俺の核のレンズと同じくらいの大きさのレンズが一つ。
そりゃ、オベロン社支部ってくらいだから、レンズの一つや二つあっても不思議じゃないけど。

(いやな思い出だからな……)

まだ外の世界なんて知識でしか知らなくて、狭いガラスの水槽と、暴力しか与えられないあの研究所が自分の全てだった頃、俺という成功例が出てからは、天上側の研究者達は躍起になって次の人型レンズ兵器を作ろうと必死だった。
日々、生み出されては失敗だと廃棄されていく、命。そして、レンズ。
ある意味、俺にとっては唯一の繋がりのある弟妹達だったんだろうに。そして、俺が生まれる前に作られたであろう兄姉達も。

「シェイドってスッゲェなぁ!」
「……いきなり何事?」

ついうっかり物思いにふけっちまったよ。皆の話オールスルーだったし。

「聞いてなかったのか?バルックさんが教えてくれた話、シェイドが話してたのと同じでさ」
「やあ、ようやく話ができそうだね。シェイド……君?」

周りがホッとしてるのを見る限り、どうも事前に俺が男だということをしっかり念押ししたのが伺える。面と向かって言われるよりかはマシだが、やっぱ気になるもんは気になる。

「天地戦争に詳しいようだね。最も、随分と敗者側には厳しい捉え方のようだったが」

そういやこの人自称天上人の子孫なんだっけ?ぺらぺら喋ったのは迂闊だったか。

「……別に。物の見方なんて一通りじゃないんだから、千年も前の歴史に対する見解がいくつあったっておかしくない。どちらかが間違っているか、どちらも正解なのかなんて、戦争の当事者にしかわからないだろ」(←思いっきり当事者)

とりあえず、これ以上面倒な事になる前に持ってたレンズを返す。

「これ、落ちてた」
「………」
「リオン、これからの予定は?」
「あ、ああ……まだ何も掴めていないから、情報が手に入るまではこの街で待機だ」
「ふーん。じゃ、俺は先に宿に行ってるな」
「え、ちょっと……シェイド!?」

自分で言うのも何だが、今の俺はもんのすごくムシの居所が悪いんだ。



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あきゅろす。
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