「あれ、シェイドじゃないか!」
「よお、スカタン。ちょっとぶり」
「そ、そんな会った途端にスカタン呼びしなくても……(沈)」

うん、以前にもよくあった光景だ。スタンがいつぞやのシャル並みにウジウジしている。

「きっと明日は快晴だな」
「明日の天気なんてどうでもいいわ。それより、何でアンタがここにいるのよ?」
「うーん、説明するの面倒くさい。いっそ俺の念でも受け取ってくれ」
「はあ?そんなムチャ言わないで、」
「なるほど。奪われた飛行竜を取り戻す任務にあたったために、私達と一緒に行く事になったのか」
「「マリーっ!?」」
「凄いですねマリーさん!どうして分かったんですか?」
「念だ♪」

スタンが田舎者特有のキラキラとした尊敬のまなざしを向けている間に、俺とルーティは額付き合わせてしゃがみ込み。

「……ちょっと、マジで念か何か送ったの?」
「……んなワケねーだろ。過去に一回だけ幽霊(18年後スタン)と会って喋った事はあるけど、それ以外の超常現象とは全くの無縁」
「じゃあ何でマリーは分かったのよ。アタシの知らない間にエスパーでも身に付けたっていうの!?」
『……さっき港に連絡に来た兵士が言ってたわよ。盗まれた飛行竜を取り戻す任務に、(女顔の)誰かが就いたって』
「何だ二人とも、本気にしたのか?軽い冗談だ♪」
「え、マリーさん冗談だったんですか?」
「「はぁ〜っ……(疲)」」

な、何かマリーだとつい本気でとっちまうっていうか……俺とした事がマジで焦っちまった。

「あ、あの、スタンさん。そちらの方は……?」

っと、こっちじゃ初対面だったな。マリーのエスパー疑惑でうっかりしてたぜ。

「初めまして、だな。俺はシェイド・エンバース。飛行竜の捜索を任されて、一時同行する事になったんだ。よろしく」
「ええっ!飛行竜が盗られたのかっ!?」
『貴様は今まで一体何を聞いていたんだッ!!』
「阿呆の相手するのは大変そうだなディムロス。同情するぜ、協力はしないけど」
『できれば逆の方が嬉しいんだがな……』

誰が好き好んでおバカな大型犬のブリーダーやるかよ。コレ(スカタン)をマスターに選んだのが運の尽きだ。諦めて大人しく我慢強く頑張ってリードひっぱってくれ。応援だけはするからさ。

「シェイドさん、ですね?私は、」
「そいつはグレバムの手下だ。僕達じゃ敵の容姿が分からないから連れて行く事にした」
「リオン!そんな言い方ないだろ!?」
「……あ、その……」
「「「………」」」

うっわ、いきなり険悪なムード全開だ。友達いなくてプライドだけは無駄に高いヤツの典型的なシラけさせ方というか。
こーいうのが発端でしょーもない喧嘩に発展したりとかして、先生に言いつけてやる!発言→緊急学級会→子どもが親にチクリ→学校に親乗り込みっつーアホらしいサイクルができあがるのがよくあるパターン。俺は……俺は悪くねぇ!みたいな?
あれ、何でたとえ話が小学校?しかも最後のはネタが違くね?

「シェイド、どうしたんだ?そんなに真剣に考え込んで」
「んー、いやさ……」

今の俺の思考回路を打ち明ければ、リオンにけなされ、ルーティに呆れられ、フィリアを困惑に陥れ、マリーにスルーされる事は間違いないな。スタンは置いといて。(酷)

「マリアンに挨拶してくんの忘れたなあって思って」

ピクッ。

「あら、シェイドってばあの屋敷のメイドと知り合いなの?」
「お前らと別れてからはあの屋敷で世話になってたんだ。特にマリアンにはよくしてもらってさー」
「………」

見なくても視線を感じるね。熱いどころか逆に冷たすぎるくらいの。絶対零度。

「シェイド、マリアンさんって人と仲良かったのか?」
「そりゃもうこの数日でかなり親密になったぞ。二人っきりで愛を囁き合うくらいの仲、」
「嘘を吐くなッ!!貴様さっきはこれから口説くとかほざいたところだろう!!」
「……になるわけないだろって続けようと思ったんだけど、リオン君〜?」

フッフッフ、甘いな……蜂蜜ぶっかけたザッハトルテ並みに甘すぎて胸焼けがするぜ坊ちゃん。

「ふぅーん、そうなんだ〜?リオンってあのメイドの事が……キャァッ!!」
「る、ルーティ!?」

リオンってば、いくら図星だからって照れ隠しに電撃はないだろ。

「も〜、坊ちゃんってば照・れ・屋・さ・ん」

うん、我ながらキモいな。と思った瞬間、

「あー、リオンさん?目が据わってません?」
「とっとと、逝け……ッ!!」

あのー、たぶん変換間違って……否、この場合は正しいのか?

げしっ!

「のわっ!?いきなり足蹴かよテメェッ!!交友浅い奴にする仕打ちじゃねーぞ!!」
「いつ誰が貴様ごときと友達になったと言うんだッ!!」
「え、シェイド、リオンと友達になったのか?俺も俺も!」
「おー、来いよスタン。三人で暑苦しい友情育もうぜ。もちろん坊ちゃんは紅一点ということで……ぬぉぁっ」
「女顔の貴様にだけは言われたくはないッ!!」
『ぼ、坊ちゃん、とうとう抜刀ですか……』
「戦うのか?楽しそうだな♪」
『貴様らいい加減にしろーーーッ!!』



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