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「懐かしいな……」
俺と、エミリオと、マリアンと、シャルと一緒に過ごした屋敷。良い思い出も、嫌な思い出もたくさんあって、でも、
(ここには何一つ残っちゃいない。もうここは、違うんだ)
感慨深く屋敷を見上げてると、突然その扉が開いて、白髪の人の良さそうな中年男性が顔を出した。
「あなたは……もしやシェイド様ですかな?」
「あ、はい。今日からしばらくの間お世話になります」
「ようこそいらっしゃいました。私はここで執事を務めさせていただいている、シャイン・レンブラントと申します。シェイド様が所望なされた書物は、既に用意しておりますので、さ、どうぞ客室へ」
「あ、ありがとう」
目茶苦茶用意周到じゃね?まぁ、レンブラント翁って前からこんなカンジだったけどさ。
と、前を歩くもっさりした白髪頭がふわふわ揺れるのをじぃーっと見てると、
ぐわしっ
「!?」
何故か思い切り掴みたくなって、本能の従うままに身体を動かした。
「………」
「………」
「あー、あはは……スイマセン、何かつい……」
いやいや、俺ってスゲェ意味不明じゃね?しかもレンブラントさん固まってるよ……(汗)
と思ってたら突然、何かを懐かしむようににっこりと微笑んでくれた。
「構いません。昔は、よく娘にもされましたからな」
「え、娘さん?」
「イレーヌといいまして、今はノイシュタットの方で働いております。なかなかやんちゃでして……髪や髭や眉毛をよくひっぱられて、大変でした」
あのイレーヌが?想像できない。
しかも眉毛まで……まぁ、気持ちはわからなくもないけど。
「では、ご用があれば遠慮なくお呼び出し下さい」
「本当に助かるよ、ありがとう」
通された客室は、皮肉にも俺が客員剣士の頃に使ってた部屋。ここにいると、あの頃の自分を思い出す。馬鹿な事に悩んで、全てを捨てるなんて決断をして、最後の最後になってようやく本当の事に気付いた、かつての俺が。
「だから、今度こそ間違わない……」
テーブルの上に一冊だけ置いてあった分厚い本を手に取り、さっそくページをめくり出す。
考えろ、考えろ……!
全てを知った上で、自分の意思で。
どうすればいい?どうすれば……!
皆が幸せになれる、笑っていられる未来のために。
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