「うっわ、可愛くねーガキ」
「………」
「「「………」」」
「……あ」

思わず心の声が表に出てしまった!
案の定、もんのっ凄く嫌そうな目でこっち睨んでくる。そうだよな、坊ちゃんもこの頃に比べりゃカイル達と一緒にいた時は随分と丸くなってたんだよ。それでも可愛げは欠片もなかったが。

「何なんだ貴様は。まさかコイツらの仲間か」

やっぱり覚えてる訳ないか。分かってたとはいえ、ちょって寂しいもんだ。
カムバック俺達のお笑いに満ち満ちた日々よ。(激しく語弊アリ)

「違う違う。全く無関係な上にお互い名前も知らない、ちょっとどっかの上空一万mですれ違った際赤の他人なスナック菓子」
「「……は?」」
「あ、そういえば自己紹介とかしてなかったよな。俺、スタン・エルロンっていうんだ」

おっとー、俺の発言に全く堪えてないヤツが一名いたか。ってかオールスルーか。

「この人はスタンの仲間なのか?」

訂正。二人だった。

「そうなんです!っていうかむしろ、俺の命の恩人なんですよ!」
「そうか。私はマリー・エージェント。ハーメンツまでスタンに護衛をしてもらっていたんだ」
「スタンにマリー、ね。俺はシェイド・エンバース。これからもヨロシクな」
「そうだな。よく分からないが、よろしく頼む♪」
「ってか、マリーって料理とかする派?実はさぁ、うどんとかお好み焼きはおかずとして取り扱って、定食風にご飯を付けるのは邪道か否かについて誰かとゆっくりじっくり語り合いたいなぁとか常々思ってて、」
「「いい加減にしろッ!!」」

おっと姉弟で綺麗にユニゾンかよ。さっそく血の繋がり発揮中か?

「ちょっとマリー!誰かも分かんないような奴にやすやすと名乗っちゃダメよ!」
「ああ、そうだったな。シェイド、こっちはルーティ・カトレット。私の相棒だ。料理についてならいつでも付き合うぞ。私も話し相手がいると楽しいからな♪」
「マリーっ!!」

ナイスボケだぜマリー!このビミョーな緊迫感と話の流れを見事にスルーしたその能力……もとい天然ボケ……俺は足下にも及ばないな!
ついでにできたら俺の質問にも答えてくれ!

「まーまーそんなに怒るなよ。ルーティだっけ?せっかく可愛い顔してんだから、もっと笑ってた方がいいぞ」
「そーだよな。ルーティって会った時からいっつも何か怒ってばっかで……笑ったらもっと可愛いと思うんだけど」
「………な!!」

でたーッ!!スカタンの天然タラシッ!!何だ、いいのか?こんな序盤で仲が進展しちゃってもいいのか?

「何なんだこの馬鹿共は……こんなのに国の兵士が束になって負けたのか?情けない……」
『仕方ありませんよ。向こうにはソーディアンが二本もありましたし……その後の会話は問題外として……ウチの一般兵じゃ太刀打ちできませんよ』
『『シャルティエ!?』』

これまた懐かしい声が。
アトワイトもだけど、シャルもあの十八年前のダイクロフトで別れて以来……というかこの場合はハジメマシテになるのか?
いやいや、千年ぶりだから俺的にはやっぱ再会になるのか……それでも気付いてもらえなかったらハジメマシテなわけであって。
いやいやいや、どうせ正体バラすんだからやっぱりお久〜☆になるわけで……………だぁぁぁっ!!ややこしいッ!!

「塵も残さん!奥義!浄破滅焼闇ッ!!……闇の炎に抱かれて消えろ!」

と、俺が果てしなくどうでもいい思考回路の中で悶々としている間に、スタン達の戦いが始まって佳境を迎えた上にケリがついていた。
ってか、片付くの早すぎだろお前ら。雑魚って言われても言い返せないぞ。

『スタン、大丈夫か!』
「くそっ……まだだぁっ!!」

あんの馬鹿、無謀にも突っ込みやがって。

ガキィンッ!!キンッ!!

「………!!」
「シェイド!?」

まだ戦おうとする二人の間に割って入って、坊ちゃんの剣を俺の武器で受け止め、スタンのディムロスを持つ手をとって振り降ろせないようにする。

「はーいはい。勝負の見えてる喧嘩を続けんのは馬鹿の証しだぞ、とんがり」

ぱっと手を放すと、体力的に限界だったスタンは、ガクリと膝をついた。

「たかが民間人が任務遂行の邪魔をするな。関係のない奴はひっこんでいろ!」
「それが全くの無関係でもないんだよな」

と、背後にある宿の中でバタバタと足音がしたと思うと、

「シェイドさん、一体何が……って、リオン様!?」
「お前達、飛行竜の…!?」

船員達の着てる服からしてわかったのか、リオンが驚きに目を見張る。

「こういう事。セインガルド王国の関係者と思われる君たちには、是非とも引き取っていただきたいものが多数ありましてね」

にっこり笑ってそう言うと、リオンは大人しく武器を引いてくれた。
ふうー、助かった。このままこんなとこでホープタウンの二の舞はしたくねーし。これから何をするべきかもうちょっと落ち着いて一人で考えたい所だったしな。

「ま、俺のやらなきゃならん事はこれで完了なんで、後はお好きにどうぞ。じゃあな」

うーん、とりあえずはファンダリアに行ってハイデルベルグ襲撃に備えるべきか……もしくはストレイライズ神殿でグレバムを押さえるか?
でも、前の時はもう一か月近く前に襲撃されてたっていうし、たぶん間に合わなさそうだ。事はすでに起こってると見ていい。

『あの、坊ちゃん。あの人も連れてった方がいいんじゃないですか?』
「んー、パス。俺まだやる事が腐るほどあるし、こんなとこでのんびり足止め食らうわけには……………あ」
「………」
『………』
「………(汗)」
『……き、聞こえてるんですか?僕の声っ!?』

ついクセでうっかりやってしまった。

「僕は、セインガルド王国客員剣士リオン・マグナスだ。お前、シェイド・エンバースとか言ったな……色々聞きたい事がある。ダリルシェイドまで一緒に来てもらおう」

結局まずは、ダリルシェイドへ、か。



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