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生き残っていた何人かの船員を集めて、任務がーとか、例のアレ(ソーディアン)がーとか馬鹿な事ほざく口を(一部は強制的に力づくで)黙らせて、次から次へと脱出ポッドに押し込んだ。
正直、モンスターを倒すよりも大変な作業だった。
「残りはあと二台、か」
おそらくもう生きてる船員は、操舵室に閉じ込めてきた者以外ゼロに等しいだろう。
助からなかった人間も決して少なくはない。片手で足りるほどだからよかった、なんて思えるものか。
「……でも、今回は生き延びたヤツもいる。残ってるヤツも死なせたりはしない。絶対に」
自分で自分に言い聞かせないと、ちゃんと立っていられない。俺は最後にもう一度だけ艦内を見て回ろうと、甲板を後にした。
と、視界の端で何者かの影が動く。
「……!?誰だ!!」
咄嗟に振り返った先には、ガコンッと重たい音を立てて落下して行く一台のポッド。
まさか、誰か生きてたのか?それで、何とか辿り着いてここまで……………ってちょっと待て。俺何か大事な事忘れてないか?
と、そこへ、俺の悩みを解決する声が響いてきた。
「……何でこんなにモンスターが!?」
「あ、スカタン忘れてた」
一番何とかなりそうで何とかなってなくて、でも結局は何とかなるであろう、物語の重要人物で……大事な俺の仲間。
走って行った先では、数匹のモンスターに囲まれた、金髪の男の姿があった。
「おい、危ないぞ!!」
ちょうどスタンに飛び掛かろうとしていたウルフを切り捨て、お互い背を向けて剣を構える。
「き、君は……!?」
「質問は後だ!金髪とん〇りコーン!!」
「ええっ!俺いつからスナック菓子に!?」
「何でお前が知ってんだよ?ハッ、さてはカ〇ビーの謀略か!?」
「それを言うならハ〇スじゃないか?」
だから何でテメー知ってんだよ!しかもスタンに突っ込まれるとは……屈辱!
「お母さんはお前をそんな子に育てた覚えはありませんっ!!」
「ええっ!君って俺のお母さんだったの!?お母さーん!!」
『ええい貴様らいい加減にしろッ!!』
何だか無駄にスタンのノリがいいなあと思っている所へ、鼓膜に響かず頭に響く懐かしい怒鳴り声が。
そういや、シャルと別れてからけっこう立つから、ホント久々なんだよな……あ、思い出したらテンション下がりそう。
「え、今の声……?」
「何言ってんだ、お前」
ディムロスの声だろ?と言いそうになって咄嗟に止める。前と全く同じとは限らねぇんだから、まだコイツがディムロスどころかソーディアン自体気付いてないって事もあるんだよな……なら。
「ボサッとしてんな!早く逃げるぞ!!」
変な混ぜっ返しは、危険だ。
そのままスタンを引っ張って甲板に上がり、最後の脱出ポッドに突き飛ばすように押し込んだ。と、その瞬間、ガクンッと船が大きく揺れる。
「高度が……下がってる?」
雲の上を飛んでいたはずが、今となってはそれらも遥か上空。少しずつ、少しずつ、ファンダリアの白い大地が近くなっているのを感じた。
「おい、とん〇り……一回しか言わないからよく聞けよ」
呼び名について反論しかけたものの、俺の深刻な表情に言葉を飲み込んでくれたようだ。
「お前の持ってる剣な、かなり大切なモンなんだ。だから、無事に地上に戻れたら、絶対にダリルシェイドに来い。何があってもだ」
「え、君は?」
スタンが何か言いかける前に、とっととポッドの蓋を閉めてしまう。ガラス窓の向こうで必死に叫ぶ様子が見えるが、それに構っている余裕はない。
と、スタンの焦り方が何か変わったような気がして、直後、咄嗟に身をよじった。
「……チッ!!」
生き残っていたワイバーンが、勢いよくその口から火を噴いた。反射的に避けた俺は無傷ですんだものの、背後にあったポッドに直撃してしまう。
「邪魔だ!くたばれ!!」
俺がモンスターを切り捨てるのと、脱出ポッドが切り離されるのはほぼ同時だった。
「……ッ!スタン!!」
だが、こうしている間にも飛行竜の高度はどんどん落ちて行く。だが、墜落までいっていないという事は、あの操舵室にいる奴等はまだ無事だって事。
俺は今、アイツらの命も抱えてるんだ。
「……絶対来いよ、ダリルシェイドに」
うなる風に掻き消されるほどの声で呟き、俺は操舵室へと駆け出した。
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