焦った焦った。まさか気がついたら空の上で、しかも落下中で、着地(落下?)点には飛行竜があって、目の前にはモンスターが大量ってあり得なくないか?
ま、ついさっき現実に起こったわけなんだが。よくぞ無傷で乗り切れたものだ。俺も、こいつも。
と、後ろで座り込んでた船員に声を掛ける。

「おい、アンタ。大丈夫か」
「ヒッ……!?」

何に怯えてんだ?
モンスターは全部片付けたし……って!

「他の奴等は?」

見回すと、赤く染まった床の上に倒れ伏す何人もの姿が。何とか息をしてる奴もいるみたいだけど、いちいち見て回ってる余裕はなさそうだ。なら、こうするしかない。

「……『リザレクション』!!」

甲板一杯に、青い癒しの魔方陣が広がる。上手く発動したのを確認して、俺は近くに倒れてる一人に駆け寄った。

「アンタも他の皆を見て周ってくれ!生きてる奴は全員こっちに集めて来い!!」
「は、はいっ!!」

二人で甲板上を駆け回って、何とか生きてる奴を集める。数えられた限りで四人、もう完全に手の施しようがない状態ではあったが、今は生きている人間を優先するしかない。せめて手厚く埋葬だけはしてやりたいもんだ。

「全員、今すぐ脱出ポッドで飛行竜から離脱しろ。できる事はやってみるけど、この艦がいつまで保つかわかったもんじゃない」
「で、ですが、私達には任務が…」
「命と心以上に大切なものってあるか?もしあるとしたら、生きて帰って家族や友達に、ただいまって言うことくらいだよ」

しっかりと相手の目を見て、諭すように訴える。

「……わかりました。飛行竜離脱後、至急ダリルシェイドへと事態の報告に戻ります」

何とか分かってはくれたっぽいな。たかだか年下のガキ相手にそんなかしこまった口調しなくてもいいんだけど、随分と堅苦しい。
ま、中将やってたり客員剣士やってたりしたお陰で慣れてはいるんだが。

「あ、あの……!!」

閉まりゆくポッドの入口で、さっきの船員がしっかりと俺に向かって敬礼をしていた。

「必ず……あなたも生きて戻って来て下さい!」
「ああ、当然」

そして俺は、落ちて行くポッドを見送るとすぐ、館内へと駆け出した。

「まずは、操舵室確保!」

頭の中から前に乗った時の飛行竜の見取り図を引っ張り出して、最短距離で向かう。
ブリッジへと出る扉を勢いよく開くとそこには、モンスターに迫られながらも必死に戦う船員の姿が。

「よく耐えたな、『ファイアボール』!!」

大技だと巻き込むかもしれないので、ピンポイントで晶術を放つ。ウルフ程度なら、この一撃で簡単に蹴りがついた。

「大丈夫か?」
「お、お前は?それに、今の術は……」
「怪我はねぇのかって聞いてんだよ!」
「ヒッ……!」

何だよさっきから人の顔見て悲鳴上げやがって……あ、もしかして俺が怖いのか?

「……とりあえず、アンタらは大丈夫なんだな。操舵室は?」
「い、今のところは……だが、俺達にももう余力が残っていない。次に来られたら……」

ここはまだモンスターには攻め入られてない。なら、中の船員は無事。飛行竜は……まだ墜ちない!

「中に入ってろ」
「え?」

戸惑いも露にする船員を、操舵室へと押し込む。

「他の奴等を探して来る。いいか、中にいる奴等に……絶対に助けるから、何が何でも諦めるなって伝えとけ」

まだ何か言いたげだったけど、時間もないからと踵を返し、その扉を塞ぐようにバリアを張る。
気休めみたいなモンだけど、ないよりはマシだよな。

「うわァァァッ!!?」
「オチオチ考え事もしてられないな」

俺はそう一人ごちて、悲鳴の聞こえた方へと駆け出した。



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