運命、再開1
落ちる。





墜ちる。





おちていく。










「ちなみに、比喩でも何でもなくズバリ直喩ってどうよ?」















上空一万mを飛ぶのは、セインガルド王国が誇る現存する最後の飛行竜、ルミナ=ドラコニス。けたたましくサイレンの鳴り響くその甲板上で、一人の船員が絶体絶命の危機に立たされていた。

「く、来るなっ!!」

目の前には、ジリジリとその距離を詰めて来るモンスター。
周りには、決して軽いとは言えない重傷を負った仲間達。
そしてここは、逃げ場のない狭い甲板。

「……、っ!?」

とうとう壁際まで追い詰められ、遊びは終わりだとでもいうように、ワイバーンの鋭い鍵爪が振り下ろされた。
瞬間、

「……ゎぁぁぁぁああああッてどうしろっつーんだよコノヤロォォォッ!!」
「?!」

ドォォォン!!

船員とモンスターをちょうど阻むようにして落下した何か。それは激しい衝突音とともに、床を破壊した勢いで砂煙を舞わせ、

「………!」

はっきりしない視界の中、船員は、流れるように美しいプラチナブルーを見た。
と思ったら、それは舞うように散り、目の前にいたはずのワイバーンを見事な剣さばきで両断する。
船員は、後にこの時の事をこう語る。

“天使が舞い降りた”と。

「あ、あの……、ッ!?」

声を掛けようとしたものの、この甲板上にいた無数のモンスターの存在を思い出す。
そうだ、俺はまだ助かっていない……でも、この天使さえいれば!
縋るような目で見つめた先には、凛と背筋を伸ばし何者をも恐れないようなまなざしで自らの敵を睨み付ける横顔。
何も怖がる事はない。きっと自分は、セインガルドで待つ家族の元へ帰れると訳もなく思った、その時。

「フフッ……アハハハハッ!」
「………?」
「そうか、ここに戻ってきたか。ならもう思う存分、俺がしたいようにしていいって事だよな」

さっきまでの優しげな美しさはどこへいったのか、一瞬にしてその形相が変わる。

「とっととかかって来いやオラァァァッ!!お前らみてぇな腐れモンスターごとき全員ミンチにして庭の肥やしにしてくれるわァァァッ!!」

その整った容姿には似合わない口汚い暴言を吐きながらも、目にも止まらぬ速さと鮮やかさで何十匹もいるモンスターを次から次へと切り捨ててゆく姿を見て、船員は、後にこの時の事をこう語る。

“……天使の仮面を被った悪鬼のようだった”と。



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あきゅろす。
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